セレンとは?体に不可欠な「必須ミネラル」
セレンは16種類ある必須ミネラルのひとつです。必須ミネラルとは、体内で合成できないため食事から摂取しなければならない成分の総称で、カルシウム、鉄、亜鉛、マグネシウムなどが有名です。その仲間にセレンも含まれています。
セレンは土壌や海水に存在し、植物や魚介、畜産物を通じて私たちの体に取り込まれます。必要量はごくわずかですが、健康維持に欠かせない働きを持っています。逆に不足すると、免疫低下や甲状腺機能の異常、さらには心筋症(心臓の筋肉の病気)などを引き起こすリスクがあることも報告されています。

セレンの役割① 強力な「抗酸化作用」
セレンは、体内の主要な抗酸化酵素である グルタチオンペルオキシダーゼ の構成成分です。この酵素は活性酸素や過酸化物を分解し、細胞を酸化ストレスから守っています。
酸化ストレスとは、いわば「体が錆びる現象」。金属が錆びて劣化するように、人間の体も酸化ダメージを受けると老化や病気が進行します。
特に「ヒドロキシラジカル」という強力な活性酸素はDNAや細胞膜を傷つけ、がんや動脈硬化のリスクを高めます。セレンを含む酵素はこれを無害化し、細胞の健康を守ります。
- 動脈硬化の進行予防
- 糖尿病や高血圧といった生活習慣病のリスク低減
- 肌や臓器の老化防止
このように、セレンは「体を錆びさせない」ための要とも言える栄養素です。
セレンの役割② 免疫機能のサポート
セレンは免疫システムの「司令塔」とも言える働きをしています。
- 免疫細胞の活性化
白血球やT細胞を活性化し、ウイルスやがん細胞に対する攻撃力を高めます。 - 炎症のコントロール
過剰な炎症反応を抑え、自己免疫疾患や慢性炎症から体を守ります。 - 感染症の重症化予防
セレン不足はインフルエンザ、HIV、新型コロナウイルスなどの感染症の重症化リスクを高めることが報告されています。
十分なセレンを摂取していると、感染症からの回復力が高まり、風邪や胃腸炎など日常的な病気にも強くなるとされています。
セレンの役割③ 甲状腺ホルモンの調整
甲状腺ホルモンは代謝や体温調整、成長に不可欠なホルモンです。
- T4(チロキシン):貯蔵型で、まだ活性を持たない
- T3(トリヨードサイロニン):活性型で、実際に体に作用する
T4からT3に変換する酵素(脱ヨウ素酵素)の構成成分がセレンです。つまりセレンが不足すると、ホルモンの変換が滞り、基礎代謝が低下します。
さらに甲状腺ホルモンの合成過程では大量の活性酸素が発生しますが、セレンを含む酵素がそれを処理し、甲状腺自体を酸化ストレスから守っています。
👉 セレンは「ホルモンのスイッチを入れる役割」と「甲状腺そのものを守る役割」の二重の働きを担っているのです。

セレン不足と過剰摂取のリスク
セレンが不足すると…
- 動脈硬化やがんのリスク増加
- 感染症への抵抗力低下
- 甲状腺機能低下による倦怠感・冷え
- 心筋症の発症のリスク
セレンを摂りすぎると…
セレンの耐容上限量は 400µg/日 とされています。通常の食事で超えることはまれですが、サプリを過剰に摂ると以下の症状が出る可能性があります。
- 爪や毛髪の異常(脆くなる、脱毛)
- 吐き気・下痢などの消化器症状
- 神経障害
日本は魚をよく食べる食文化があり、欧米に比べてセレン不足は少ないとされます。しかし食生活の変化で魚の摂取量が減っており、今後不足リスクが懸念されています。
まとめ
セレンは聞き慣れない栄養素ですが、私たちの健康を陰で支える必須ミネラルです。
- 強力な抗酸化作用で老化や生活習慣病から細胞を守る
- 免疫機能をサポートして感染症に強い体をつくる
- 甲状腺ホルモンを調整して代謝や体温をコントロールする
微量ながらこれほど重要な働きを持つ栄養素は多くありません。アンチエイジングや生活習慣病予防、免疫力向上を考えるうえでも、セレンは欠かせない存在です。
日々の食事の中で魚などからセレンを摂取して、健康寿命を支える一助にしていきましょう。
後編ではセレンを含む食品まとめをお送りいたします。
📌 本記事は たまプラーザ南口胃腸内科クリニック/福岡天神内視鏡クリニック の医師の見解と最新研究に基づき執筆しています。健康寿命を延ばす取り組みは、薬ではなく日々の生活習慣から始まります。
📝 用語解説
活性酸素:細胞を傷つけ、老化や病気の原因になる不安定な分子。
グルタチオンペルオキシダーゼ:セレンを含む抗酸化酵素で、細胞を酸化から守る。
甲状腺ホルモン(T4・T3):代謝や体温を調整するホルモン。T4からT3への変換にセレンが必要。
セレン中毒:過剰摂取によって起こる体調不良。脱毛や爪の異常など。