
このように、食物繊維は長い間、栄養学の中でも大きく注目される存在ではありませんでした。
しかし、腸内環境という考え方が広まり、腸内細菌との関係が明らかになるにつれて、その役割が少しずつ見直されてきました。
なかでも、腸内細菌のエサとなり、腸内で働く発酵性食物繊維は、現在の腸活を考えるうえで欠かせない存在として注目されています。
食物繊維はなぜ重要視されるようになったのか
かつて食物繊維は、「消化されない食べカス」「腸を掃除するだけのもの」と考えられていました。実際、医師が学生だった頃の教科書でも、食物繊維は栄養素として深く扱われることはほとんどありませんでした。
しかし近年の研究で、食物繊維が腸内細菌のエサになること、そして腸内細菌が作り出す物質が私たちの体に大きな影響を与えていることがわかってきました。
「腸内環境っていう概念が広まって、免疫や健康との関係が注目されるようになりましたよね」
と秋山先生が語るように、食物繊維は“ただ通過するもの”から、“体を支える重要な存在”へと評価が一変したのです。
食物繊維の正体|糖のつながりがカギになる
そもそも、食物繊維は何からできているのでしょうか。
「実は食物繊維って、糖からできているんですよね」
という平島先生の説明に、意外に感じる方も多いかもしれません。
糖は、
- 単糖類(ブドウ糖・果糖など)
- 二糖類(ショ糖・乳糖など)
- 多糖類(デンプン・オリゴ糖など)
という形で分類されます。
糖の数が少ないほど消化吸収されやすく、胃から小腸で吸収されてしまいます。
一方、多糖類は構造が複雑で、消化されにくい特徴があります。ここで重要になるのが、糖同士の結合の仕方です。
糖の結合には主に「α結合」と「β結合」があり、人間の体はα結合を分解する酵素は持っていますが、β結合を分解する酵素は持っていません。
そのため、β結合でできた多糖類は消化されず、大腸まで届くのです。これこそが、食物繊維の正体です。

発酵性食物繊維とは何か
大腸まで届いた食物繊維は、そこで終わりではありません。
「人間は分解できないけど、腸内細菌の中には分解できるやつらがいるんですよね」
と平島先生が笑いながら話すように、腸内細菌は食物繊維を分解し、発酵させます。
このときに作られるのが、短鎖脂肪酸です。
短鎖脂肪酸には、
- 腸のぜん動運動を活発にする
- 便秘の改善に役立つ
- 腸内環境を整える
といった働きがあります。
腸内細菌がエサとして利用でき、発酵によって有益な物質を生み出す食物繊維を、発酵性食物繊維と呼びます。
発酵性食物繊維をしっかり摂取することで、腸内細菌の数が増え、種類の多様性も高まります。これは、腸内環境にとって非常に良い状態だと言えます。
オリゴ糖と腸内環境の関係
オリゴ糖は多糖類の一種で、人の消化酵素では分解されず、大腸まで届いて腸内細菌のエサになります。はちみつや玉ねぎなどの食品にも含まれていますが、最近ではてんさい由来のオリゴ糖など、使いやすい形で販売されているものもあります。
「粉よりシロップの方が混ぜやすくて続けやすいですよね」
「でもボトルが大きくて、置き場所に困るんですよ(笑)」
こうした雑談からも、先生方が日常生活の中で無理なく腸活を続けている様子が伝わってきます。
オリゴ糖を乳酸菌などと一緒に摂取することで、免疫の活性化と腸内細菌の“育成”を同時に行える点も、大きなメリットです。

医師が考える「続けやすい腸活」とは
腸内環境を整えるうえで大切なのは、やはり続けることです。
「取り忘れがないって、実はすごく大事なんですよね」
という先生方の言葉が示すように、腸活は特別なことを一時的に頑張るよりも、日常生活の中で無理なく続けられる形を選ぶことが重要になります。
発酵性食物繊維やオリゴ糖は、腸内細菌のエサとなり、腸内環境に良い影響を与えることがわかっています。先生方自身も、こうした成分を日常的に摂取する方法として、オリゴ糖などを含むサプリメントを取り入れています。必要な成分をまとめて摂ることで、取り忘れを防ぎ、毎日の習慣として続けやすい点も大きなメリットです。
かつては栄養学の中で脇役とされてきた食物繊維ですが、現在では腸内環境を支える重要な存在として位置づけられています。腸活を始めるにあたっては、まず発酵性食物繊維を意識し、無理なく続けられる方法を選ぶことが、確かな第一歩と言えるでしょう。
📝 用語解説
食物繊維
人の消化酵素では分解されにくい成分。腸内環境に大きく関与する。
発酵性食物繊維
腸内細菌が分解・発酵できる食物繊維。短鎖脂肪酸の産生に関与。
腸内細菌
大腸内に生息する細菌群。消化・免疫・代謝などに影響する。
腸内環境
腸内細菌のバランスや活動状態を含めた腸の健康状態。
短鎖脂肪酸
腸内細菌が発酵性食物繊維から作る代謝物。腸の運動を促進する。
単糖類
糖が1つの構造。ブドウ糖や果糖など。
二糖類
糖が2つ結合したもの。ショ糖、乳糖など。
多糖類
糖が3つ以上連なったもの。デンプンやオリゴ糖など。
α結合
人の消化酵素で分解できる糖の結合様式。