大腸がんの原因菌が判明?

    今回は、大腸がんの原因について解説したいと思います。

    大腸がんは年々増加傾向と言われています。現在、女性のがん死因の第1位が大腸がんであり、男性もがん死因の第2位まで上がってきました。

    大腸がんの原因は、食生活の欧米化や運動不足などが挙げられていますが、最近の知見では、大腸がんの原因菌が存在するのではないかと言われています。

    そこで現在、大腸がんの原因菌と言われている菌を3つ紹介したいと思います。

    フソバクテリウム・ヌクレアタム菌

    大腸がんの原因ではないかと言われている細菌の1つ目は、Fusobacterium nucleatum(フソバクテリウム・ヌクレアタム)という菌です。

    この菌が大腸がんの周囲で増えており、細胞接着や免疫回避などを通じて大腸がんの発がん・進展に関与することが示されています。これは論文でも報告されています。

    Leila Dadgar-Zankbar,et al, “Exploring the role of Fusobacterium nucleatum in colorectal cancer: implications for tumor proliferation and chemoresistance” Cell Commun Signal. 2024 Nov 15;22(1):547

    実はこの菌は、酪酸を産生します。つまり、酪酸菌の一種ということになります。

    この菌がなぜ大腸がんの原因となるのでしょうか?それは、以下のようなメカニズムによります。

    • 大腸の粘膜細胞にくっついて細胞内の遺伝子スイッチが乱れてしまいます。これにより細胞ががん化しやすくなります。
    • がん細胞ができると、本来なら免疫細胞ががん細胞を攻撃するのですが、フソバクテリウム・ヌクレアタムは免疫の働きを弱める作用を持っており、これによりがんを免疫から守るんです。
    • 腸内環境を、炎症が長続きしやすい方向に持っていく作用があります。腸内の炎症が長続きすると、大腸がんのリスクが上がります。

    ちなみに、このフソバクテリウム・ヌクレアタムですが、元々口腔内に常在する菌です。正確には、歯周病の歯周ポケットやプラークに住み着いています。

    これが、口腔内から食道、胃、小腸を通過して大腸に住み着いたり、血流に乗って大腸に移行して住み着くと言われています。

    ですので、口腔内は常に清潔に保っておくことが大切ですし、特に起床時は一番口腔内の環境が悪いですので、朝食を食べる前に歯磨きした方が良いと言われています。

    腸内環境だけでなく、口腔内の環境も良くしておくことが重要だということがわかりますね。

    ヘリコバクター・ピロリ菌

    次が、ヘリコバクター・ピロリ菌です。井戸水を飲んだり、ピロリ菌陽性の両親、特に母親からもらうことで胃の中に住み着いてしまう菌です。5歳までに感染が成立すると言われています。胃がんの原因菌として有名ですよね。

    さて、そんなピロリ菌ですが、胃がんだけでなく大腸がんのリスク因子にもなっているのではないかという報告が出てきてます。

    Frías-Ordoñez JS,et al,” Helicobacter pylori and Colorectal Cancer: Meeting Sir Austin Bradford Hill’s Causality Criteria” Helicobacter. 2025 Mar-Apr;30(2):e70024.

     doi: 10.1111/hel.70024.

    具体的には、ピロリ菌感染者は、大腸がんのリスクが1.3倍〜2倍程度高くなるということです。

    それにしても、なぜ胃の中に住み着いているピロリ菌が大腸がんのリスク因子になるんでしょうか?

    論文による仮説ですが、

    • ピロリ菌感染により、胃酸分泌能低下や胃酸の強さが弱まることにより、腸内細菌叢に変化を来たす。特に、酪酸菌が減りやすいという報告がある。
    • 大腸の粘膜を保護する粘液分泌能が低くなり、大腸に慢性的な炎症が起こる。
    • アッカーマンシア菌という、粘膜をたくさん食べる菌が増殖して、さらに大腸を保護する粘液が減ってしまう。

    このような感じでピロリ菌が大腸がんのリスク因子になっているのではないかと言われています。

    もしピロリ菌が大腸がんのリスク因子になるのであれば、ピロリ菌の除菌をすれば、大腸がんのリスクが下がることになりますよね。

    実際にそのような報告があるか調べてみたらありました。

    Li X,et al,” Helicobacter pylori infection, anti- Helicobacter pylori treatment and risk of colorectal cancer and adenoma: an observational study and a meta-analysis” EClinicalMedicine. 2025 Jun 9:84:103299.

     doi: 10.1016/j.eclinm.2025.103299.eCollection 2025 Jun.

    世界中の約4,900万人のデータを解析した報告なのですが、ピロリ菌除菌を行うことにより、大腸がんと大腸ポリープのリスクが約56%も低下するということでした。

    この結果からも、ピロリ菌が大腸がんのリスク因子になっている可能性は高いです。

    コリバクチン産生型大腸菌

    3つ目は、コリバクチン産生型大腸菌です。

    先日、「大腸がんの原因菌が判明か?」ということニュースになっていました。

    これは、東京大学と大阪大学の研究チームが発表した論文報告です。

    Shiba S,et al,” Prevalence and chronology of colibactin-associated mutational processes and their microbiome spectra in Japanese colorectal cancer”Nat Genet. 2026 Aug 10.

    具体的な内容ですが、日本人の大腸がん患者454人のがん細胞をゲノム解析したところ、44.8%で「コリバクチン毒素」によって、がん細胞のDNAが傷つけられた傷跡が認められたということでした。

    しかもこの傷跡が認められる患者さんは、1965年以降に生まれた人が多いとのことです。つまり、60歳以下の大腸がん患者さんに多いということになりますね。

    コリバクチンとは、一部の大腸菌が産生する毒素のことです。

    コリバクチンによる毒素で大腸上皮細胞が傷つけられ、その傷を修復しようとするときにうまく修復できず、遺伝子変異をきたしてがんになっていくと推測されています。

    それでは、日本人でどれくらいの人がコリバクチン産生大腸菌を持っているのでしょうか?

    過去の研究結果を見てみると、だいたい25~30%で保有しているとのことです。つまり、3~4人に1人がコリバクチン産生大腸菌を保有していることになります。

    Watanabe D,et al,” Stool pattern is associated with not only the prevalence of tumorigenic bacteria isolated from fecal matter but also plasma and fecal fatty acids in healthy Japanese adults”BMC Microbiol. 2021 Jun 28;21:196.

    割合としては多いですが、この菌を持っているから必ず大腸がんになるというわけではないですので安心してください。

    それでは、この菌を持っているとして、大腸がんを予防するために我々ができることを考えてみます。

    まずは2025年に発表された論文です。

    発酵性食物繊維をしっかりと摂っていると、コリバクチン産生大腸菌による大腸がんの発がん作用が抑制されたとのことです。

    Bhupesh Kumar Thakur, et al,“Dietary fibre counters the oncogenic potential of colibactin-producing Escherichia coli in colorectal cancer” nature microbiology, 2025 Apr;10(4):855-870

    これは、発酵性食物繊維がコリバクチンを中和するわけではなく、発酵性食物繊維により、短鎖脂肪酸が増えて、腸内の慢性炎症が鎮静化し、コリバクチン産生大腸菌の機能が抑制され、コリバクチン産生が落ちるためと推測されています。

    また、加工肉や赤身肉の摂取を減らすことで、コリバクチン産生大腸菌が原因である大腸がんを減らすことができるという報告もあります。

    Arima K,et al,” Western-style Diet, pks Island-Carrying Escherichia coli, and Colorectal Cancer: Analyses from Two Large Prospective Cohort Studies”Gastroenterology.

    2022 Jun 24;163(4):862–874. 

    つまり、普段から食物繊維をきちんと摂取して、加工肉や赤身肉の摂取を減らすという、腸活の基本を毎日行っていれば問題ないということになります。

    以上の3つの菌が、現在、大腸がんの原因菌と言われている菌です。

    この3つの菌のうち、ヘリコバクター・ピロリ菌は除菌治療が確立していますので、ヘリコバクター・ピロリ菌陽性を指摘されたら、必ず除菌を行うことが重要です。

    残りのフソバクテリウム・ヌクレアタム菌と、コリバクチン産生型大腸菌については、腸活を行って大腸がん予防をしましょう。朝食を食べる前に歯磨きをして口腔内を清潔にし、毎日しっかりと発酵性食物繊維をと摂って、加工肉や赤身肉を食べすぎないようにしましょう。