
加工肉とは何か?
まず「加工肉」とは何を指すのでしょうか。
一般的に ハム、ソーセージ、ベーコン、サラミなど、塩漬け・燻製・発酵・保存料の使用などで加工された肉製品を指します。手軽で美味しく、朝食やお弁当、居酒屋メニューでもよく登場します。
とくに朝食では「パン+卵+ウインナーやベーコン」という組み合わせが定番。ホテルのビュッフェでも必ず並んでおり、日常的に口にしている人は多いでしょう。
しかし、IARCの分類では加工肉は「ヒトに対して発がん性がある(グループ1)」に含まれ、喫煙やアスベストと同じカテゴリーに位置づけられています。もちろん喫煙と同等の危険度という意味ではなく、「科学的に“発がん性がある”と認められている」という分類上の位置づけです。
どれくらい食べると危険?「50g=ハム3枚、ウインナー2本」
IARCの発表では「1日50gで18%リスク増」とされました。では50gとはどの程度でしょうか。
- スライスハム:約3枚
- ベーコン:約2〜3枚
- ウインナー:約2本
- フランクフルト:約0.8本
朝食でベーコンエッグを食べたり、ソーセージを2本添えたりすると、簡単に50gに到達します。特に「毎朝ウインナーを食べる」習慣のある人や「お弁当に必ずハムを入れる」家庭では、知らず知らずのうちに“リスクが上がるライン”を毎日越えている可能性があります。
なぜ加工肉が大腸がんリスクを高めるのか?

加工肉と大腸がんの関連は複数の要因が重なっています。代表的なものを4つ挙げます。
1.保存料(亜硝酸塩・硝酸塩)
加工肉は赤い色や鮮度を保つために亜硝酸塩などの保存料が使われます。これらは体内でニトロソ化合物に変化し、大腸の粘膜を刺激して発がんリスクを高めると考えられています。
2.調理過程で生じる発がん物質
ベーコンやソーセージを焼いたり揚げたりすると、複素環式アミンや多環式アミンといった発がん物質が生成されます。特に表面にできる「焦げ目」は、香ばしさの裏でこうした物質を増やし、リスク因子となることが知られています。
3.ヘム鉄の酸化作用
赤身肉や加工肉に含まれるヘム鉄は、腸内で酸化されやすく、活性酸素を生じます。活性酸素はDNAを傷つけ、がんの原因となることが知られています。
4.腸内環境への影響
加工肉を多く摂ると腸内の悪玉菌が増え、有害な代謝物が生じます。これにより腸内の炎症や「腸漏れ(リーキーガット)」が起こり、大腸がんのリスクを高めると考えられています。
私たちはどう付き合うべきか?
加工肉を「完全に禁止する」必要はありません。大切なのは頻度と量をコントロールすることです。
- 毎日は食べない:週1〜2回にとどめる。
- 少量を楽しむ:一度にまとめて食べない。
- 食物繊維をプラス:野菜や海藻で腸内環境を整える。
- 調理法を工夫:焦げを避け、蒸す・煮るなどを選ぶ。
私たち医師自身も「完全に食べない」わけではなく、週1回程度に抑えています。データを知ったうえで「頻度を減らす」ことが健康的に楽しむポイントです。
まとめ
- 加工肉を毎日50g食べると大腸がんリスクが18%増。
- 50g=ハム3枚、ウインナー2本といった身近な量。
- リスクの背景には保存料・発がん物質・ヘム鉄・腸内環境の悪化がある。
- 完全に避ける必要はなく、週1〜2回程度に抑えるのが現実的な対策。
参考:用語ミニ解説
- 加工肉:ハム、ソーセージ、ベーコンなど塩漬けや燻製などで保存性を高めた肉製品。
- 国際がん研究機関(IARC):WHO傘下の研究機関で、発がん性物質の評価を行っている。
- 発がん性グループ分類:IARCが発表する、物質や食品の発がん性に関する科学的根拠のレベル分け。
- 亜硝酸塩・硝酸塩:加工肉の発色や保存に用いられる食品添加物で、体内で発がん性物質に変化することがある。
- 複素環式アミン:肉や魚を高温で加熱すると生成される化学物質で、DNAを損傷する性質がある。
- 多環式アミン:直火や油煙によって発生する発がん性化合物で、炭火焼きなどで多く生じやすい。
- ヘム鉄:赤身肉や加工肉に含まれる鉄の一種で、腸内で酸化して活性酸素を発生させることがある。
- 活性酸素:体内で酸素が変化してできる反応性の高い物質で、細胞やDNAを傷つける。
- 腸内細菌叢(フローラ):腸内に住む数百種類以上の細菌の集まりで、消化・免疫・健康維持に関わる。
- 腸漏れ(リーキーガット):腸の粘膜バリアが弱まり、未消化物や毒素が血液に漏れ出す状態。
📌 本記事は たまプラーザ南口胃腸内科クリニック/福岡天神内視鏡クリニック の医師による日々の診療で得られた知見や医学的エビデンスをもとに作成しています。