平島医師
平島医師
最近、コメント欄で「乳酸菌はヨーグルトで足りますか?」「何個くらい摂ればいいですか?」って質問がすごく多いんです。腸活とか腸漏れって言葉も広がっていて、やっぱり“数”が大事な気がするんですが、どう考えればいいでしょう?
秋山医師
秋山医師
よくこの手の質問ありますよね。今日は「どれくらい摂るべきか」と「何を選ぶか」を整理して話しましょう。結論から言うと、“量(数)”と“形(生菌/死菌・代謝産物)”の両方がポイントになります。
平島医師
平島医師
腸内環境が乱れると、便秘・下痢だけじゃなくて免疫低下や慢性炎症、生活習慣病にも関係するってよく言いますよね?
秋山医師
秋山医師
はい。腸は免疫の“基地”なんです。小腸にはパイエル板が多数あって、さらにGALT(腸管関連リンパ組織)が発達。ここに腸内細菌が働きかけて免疫のバランスを整える。だから善玉菌優位に傾けることがとても重要なんです。
平島医師
平島医師
なるほど。では実際、乳酸菌は何個くらいを目安にすれば?
秋山医師
秋山医師
腸内常在菌は約100兆個。この1%に相当する“1兆個”のスケールで投与すると、腸内の“微生物の海”の中でも意味のある変化が出やすいという考え方です。焼け石に水にしないための目安ですね。
平島医師
平島医師
ただ、ヨーグルトだと1パックでせいぜい数十億〜数百億個。1兆個に届かせるのは現実的ではない……
秋山医師
秋山医師
はい。おっしゃる通りですね。量を確保するならサプリが現実的。しかも最近は生菌じゃなくても(死菌でも)有効というエビデンスが積み重なっている。さらに乳酸・短鎖脂肪酸など“発酵代謝産物”にも注目が集まっています(ポストバイオティクス/バイオジェニクス)。

    腸は“免疫の基地”—腸内環境と全身の関係をおさらい

    腸内環境が乱れると、便通異常(便秘・下痢)だけでなく、免疫力の低下、慢性炎症、アレルギーの誘発、生活習慣病のリスク上昇など、体の広い領域に影響します。背景にあるのが腸の免疫システムです。

    • パイエル板:小腸に分布する免疫の“監視所”。侵入してくる細菌やウイルスに対する免疫反応のハブ。
    • GALT(腸管関連リンパ組織):腸粘膜に張り巡らされた免疫ネットワーク。腸は最大の免疫臓器とも言われます。
    • 腸内細菌の役割:善玉菌が優勢だとIgA分泌やNK細胞活性化など“守りのスイッチ”が入りやすく、悪玉菌優位だと慢性炎症アレルギーが起こりやすい。

    この“免疫の基地”に良い刺激を届ける手段の一つが乳酸菌です。従来の「便通を整える」イメージに加え、免疫強化抗炎症、さらにはがん予防につながる可能性まで議論されています。

    パイエル板は、小腸に存在するドーム状の免疫器官で、腸管免疫の中核を担っています。そこでは、M細胞が腸管内の病原体などの抗原を取り込み、直下の免疫細胞(樹状細胞、T細胞、B細胞など)に渡して、体内の病原体侵入を防ぐための免疫応答を誘導します。

    「1兆個」の目安—なぜ“数”がそんなに重要なのか

    人の腸内には約100兆個の常在菌が住んでいます。ここに乳酸菌を足して全体のバランスを動かすには、1兆個(100兆個の1%)という“まとまった数”が必要というのが今日のキーメッセージ。少量をちょこちょこ入れても微生物の海に埋もれやすいため、スケールのある投与が理にかなっているという考え方です。

    • ヨーグルトの限界:100gあたり10億〜100億個程度。大きいパック(300〜400g)でも数十億〜数百億個1兆個に届かせるのは非現実的です。
    • サプリの利点:製品差はありますが、含有数を設計しやすい1兆個の乳酸菌を含むサプリメントも存在します。

    「“生きて腸に届く”が正義」という刷り込みも根強いのですが、数を確保しようと長時間培養すると結局“死菌”が増えるのが現実。そこで次章のトピックにつながります。

    日本では「ヨーグルト」は法令上の分類でいうと「発酵乳」に当たり、厚生労働省の省令(通称:乳等省令)で成分規格が決められています。発酵乳=1mLあたり1,000万個以上の乳酸菌(or酵母)が生きていることが条件。

    生菌じゃなくても効く—“死菌”と“代謝産物”の時代へ

    最新の知見では、死菌(加熱菌体など)でも十分な有用性が示されています。さらに、乳酸菌が発酵で生み出す乳酸・短鎖脂肪酸(酢酸・プロピオン酸・酪酸)などの“発酵代謝産物”自体が積極的に働くことが注目され、これをポストバイオティクス(あるいはバイオジェニクス)と呼びます。

    • 死菌の働き:腸管上皮に接触して免疫細胞を刺激、腸内の善玉菌の“エサ”としても機能。
    • 発酵代謝産物の働き
      • 腸粘膜の栄養源(短鎖脂肪酸は腸上皮の主要なエネルギー)
      • バリア機能の強化(“腸漏れ”の抑制)
      • 抗炎症(過剰な炎症反応を鎮める)

    つまり、「生きて到達するか」より「何を、どれだけ届けるか」が実は大事。量(1兆個目安)とポストバイオティクス的発想を組み合わせると、より現実的で再現性の高いアプローチになります。

    現実的な“選び方”—ヨーグルトとサプリの役割分担

    • ヨーグルト:おいしく続けやすい、食習慣に組み込みやすい。ただし数の確保は難しい。食としての楽しさ・満足感や補助的な位置づけに。
    • サプリ数を設計できるのが強み。1兆個クラスのプロダクトを選ぶと、腸内生態系に“意味のあるスケール”で介入しやすい。死菌・代謝産物を含む設計も選択肢。

    重要なのは継続。腸内細菌は入れた菌や代謝産物が“通過する間”に働く面が大きく、数日で便とともに排出されます。だからこそ毎日更新するイメージで、少しずつでも続けることが最大のコツです。

    小さな実感エピソード—「続けたら変わった」

    収録後の雑談で、平島先生の同級生(高校サッカー部キャプテン)から数十年ぶりに「お礼」メッセージが届いた話が。動画を見て乳酸菌サプリ(ラクエイド)を定期的に継続したところ、長年の肝機能異常が採血で正常化。もちろん個人差はありますし機序を断定はできませんが、腸内環境と免疫・全身状態の連関を感じさせる象徴的な経験でした。
    大事なのは、“一気に完璧”ではなく「今日から少し」×「毎日」です。

    まとめ—“数”と“続ける”を味方に

    • 腸は免疫の基地。腸内細菌がIgANK細胞などを通じて守りのスイッチを入れる。
    • 1兆個の目安は、腸内100兆個の常在菌に対して“意味のあるスケール”で介入するための考え方。
    • 死菌でも有効。さらにポストバイオティクス(発酵代謝産物)が腸のエネルギー・バリア・抗炎症に寄与。
    • ヨーグルトは補助的数の確保はサプリが現実的
    • 何より継続毎日更新して、腸に“良い刺激”を送り続けることが近道。

    📌この記事は たまプラーザ南口胃腸内科クリニック/福岡天神内視鏡クリニック の医師監修のもと作成しました。
    市販薬やサプリメントの利用については、基礎疾患や持病のある方は必ず主治医にご相談ください。

    📝 用語解説
    腸内細菌(常在菌)
     腸に住みつく細菌の総称。総数はおよそ100兆個といわれ、生体機能や免疫に大きく関わる。

    パイエル板
     小腸粘膜にある免疫の集積所。侵入微生物の監視・応答を担う。

    GALT(腸管関連リンパ組織)
     腸粘膜に広がる免疫ネットワークの総称。腸が“最大の免疫臓器”と呼ばれる根拠。

    IgA
     粘膜免疫の主役の抗体。腸管内で病原体の付着や侵入をブロックする。

    NK細胞(ナチュラルキラー細胞)
     がん細胞やウイルス感染細胞を見つけて攻撃する生体防御の前線部隊。

    乳酸菌
     糖を分解して乳酸を作る善玉菌の一群。便通調整に加え、免疫賦活・抗炎症など多面的に働く。

    死菌
     加熱や乾燥などで不活化した菌体。免疫刺激善玉菌のエサなどの機能が残り、有用性が確認されている。

    ポストバイオティクス(バイオジェニクス)
     発酵代謝産物(乳酸・短鎖脂肪酸など)や菌体成分そのものの機能に注目する概念。腸のエネルギー・バリア・抗炎症に寄与。

    短鎖脂肪酸(SCFA)
     酢酸・プロピオン酸・酪酸の総称。腸上皮のエネルギー源、バリア強化、炎症抑制などに働く。

    腸漏れ(リーキーガット)
     腸のバリア機能が弱まり、不要な物質が体内に漏れ込む状態。炎症やアレルギーの一因とされる。