
今回は「採血による栄養解析(オーソモレキュラー2025年度版)」というテーマで、平島先生・秋山先生・スタッフ・友人の4人が参加。一般的な健康診断項目では見逃されがちな“低い側の数値”の重要性を解説していきます。
「基準値=正常値」ではない? その本当の意味
血液検査の結果を見ると、H(高値)やL(低値)の文字が並び、
多くの人は「数値が高いが悪い」「数値が低いなら大丈夫」と思いがちです。
しかし、この“基準値”という概念は、必ずしも「健康の指標」ではありません。
また、検査会社によって数値のばらつきもあり、年齢層の若い人を母集団に設定しているケースも多く、中高年層にとっては必ずしも“理想の健康値”とは言えません。
つまり「H(高値)やL(低値)の判定」はあくまで機械的に判断されたラベルにすぎず、医師の目で見て判断することが大切なのです。
オーソモレキュラー栄養医学では、病気の有無ではなく“細胞がどれだけ元気に働いているか”を血液データから読み解きます。特に注目すべきは「たんぱく質代謝」の評価です。

たんぱく質はすべての基礎
人間の体の約60%は水分、残り40%のうち半分はたんぱく質で構成されています。
筋肉・骨・血液・ホルモン・酵素・皮膚・髪・消化管など、ほとんどがたんぱく質を原料としており、これが不足すると全身の機能が低下してしまいます。
平島先生は「血となり肉となる、最も重要な栄養素」と強調します。
総たんぱく(TP)で“体のベース”を確認
- 基準値:6.7〜8.3 g/dL
- 理想値:7.1〜7.5(栄養学的観点)
総たんぱくが低い場合、糖質過多やたんぱく質不足が考えられます。
糖質制限を行い、体重1kgあたり1.5〜2gのたんぱく質の摂取意識することが理想です。
ただし、脱水や肝機能異常などでも数値は変動するため、単独ではなく他項目とのバランスを見ます。
実際の測定では、
平島先生:7.5g/dL
秋山先生:7.3g/dL
スタッフ:8.1g/dL
友人:7.5g/dLと
全員が良好な範囲でした。
「やはり意識して摂っていると結果に出るね」と笑いながら振り返ります。
尿素窒素(BUN)で“代謝の実力”を見る
尿素窒素は、たんぱく質が分解された最終産物です。
一般的には腎機能を見る項目ですが、オーソモレキュラーでは「たんぱく質摂取・代謝の指標」として重要視します。
- 理想値:15〜22 mg/dL
- 15未満:たんぱく質不足またはビタミンB群不足の可能性
実際の結果では…
平島先生:21.7mg/dLと理想値内。
秋山先生:11mg/dLとやや低め。
「昼食のたんぱく質が足りていないかも」と自己分析。
スタッフ:10mg/dL
友人:14mg/dLと
こちらもたんぱく質不足傾向が見られました。
γ-GTPとBUNの“バランス”で脂肪肝を見抜く
意外なポイントが、BUNとγ-GTPの関係性。
秋山先生によると、「この2つの数値が近いほど理想的」とのこと。
もしγ-GTPがBUNより極端に高い場合、脂肪肝や炎症の存在が疑われます。
実際のデータでは、
平島先生:BUN21.7mg/dL/γ-GTP 33
秋山先生:BUN11mg/dL/γ-GTP 17
スタッフ:BUN10mg/dL/γ-GTP 72
友人:BUN14mg/dL/γ-GTP 98
後者2名は典型的な脂肪肝パターン。
「簡単に診断できちゃいましたね(笑)」と撮影現場で苦笑い。
日常的に飲酒や糖質過多の傾向がある人は、まさに要注意ポイントです。
たんぱく質不足がもたらす“静かな不調”
たんぱく質が不足すると、筋肉量の低下だけでなく、
酵素やホルモンの材料が不足し、次のような全身症状が現れる可能性があります。
- 消化酵素不足による胃もたれ・逆流・食後のだるさ
- 代謝酵素の減少による疲労感・冷え
- 抗酸化酵素の低下による老化の促進・肌トラブル
- ホルモン低下による活力の喪失・元気のなさ
- 免疫機能低下による風邪をひきやすくなる傾向
実際、スタッフからも「最近食後に逆流っぽさを感じる」との声もあり、秋山先生は「消化酵素が落ちているかもしれませんね」と分析しました。

まとめ:血液検査を“栄養の鏡”として見る
血液検査の結果は「病気があるかないか」だけを見るものではなく、
体の栄養バランスや代謝状態を映す“鏡”でもあります。
「高い(高値)や低い(低値)」という記号の裏に、
・食事バランス
・ビタミン・ミネラルの代謝力
・細胞の元気度
といった情報が隠れています。
平島先生はこう締めくくります。
オーソモレキュラーの栄養解析は、まさにそのための羅針盤。
これからの健康管理は、「異常値を見る」から「低い値を読む」時代へと変わりつつあります。
次回の中編は…
AST/ALT/γ-GTPなどの酵素項目を中心に、ビタミンB6との関係、LDL・HDLコレステロール、ChE・MCVといった肝の合成能や赤血球指標、さらにクレアチニン・尿酸など腎機能や代謝のヒントになる数値を、平島先生、秋山先生とスタッフの実測例とともにやさしく整理します。
📌この記事は たまプラーザ南口胃腸内科クリニック/福岡天神内視鏡クリニック の医師監修のもと作成しました。
栄養やサプリメントの利用については、基礎疾患や持病のある方は必ず主治医にご相談ください。
用語解説
基準値(参考基準範囲)
検査会社が集めたデータの“真ん中95%”の範囲。統計上の目安であって「健康の理想値」とは限りません。ラボや母集団によっても基準値は変わります。
理想値(栄養学的目安)
臓器障害の有無ではなく“細胞が元気に働く”ための最適域。本文ではTP7.1〜7.5 g/dL、BUN15〜22 mg/dLを目安として提示。
逸脱酵素
本来は細胞内で働く酵素が、細胞ダメージなどで血中に“漏れ出た”もの。AST、ALT、γ-GTP、LDH、ALP、CK、アミラーゼ、リパーゼなど。
AST/ALT
肝細胞や筋肉に多い酵素。高値は肝障害や筋障害のサイン。オーソモレキュラーでは“低めの推移”も栄養状態(たんぱく・B群)を考える手掛かりに。
γ-GTP
胆道系やアルコールの影響を反映しやすい酵素。高値は脂肪肝、飲酒、胆汁うっ滞などを示唆。
総たんぱく(TP)
血清中のアルブミン+グロブリンの総量。低値はたんぱく不足や糖質過多を示唆。脱水で見かけ上高くなるため他項目と併読が必須。
尿素窒素(BUN)
たんぱく分解の最終産物。腎機能指標として知られるが、栄養解析では「摂取・代謝の実力」をみる指標。低値はたんぱく/ビタミンB群不足、高値は脱水・腎機能低下・消化管出血などを考える。
ビタミンB群(とくにB6)
アミノ酸代謝や酵素反応を助ける補因子。不足すると摂ったたんぱくをうまく“回せず”、BUN低値や疲労感などにつながることがある。
脂肪肝
肝細胞に脂肪がたまった状態。糖質過多・飲酒・体重増加と関連。本文ではγ-GTPが相対的に高い人に疑い。
BUN/γ-GTPバランス
本文の実地的コツ。両者が“近い”ほど理想的、γ-GTPがBUNより大きく乖離して高い場合は脂肪肝や炎症を疑う目安に。
たんぱく質代謝
筋肉・酵素・ホルモン・皮膚粘膜など全身の材料と機能の基盤。不足は消化不良、だるさ、免疫低下、肌トラブルなど“静かな不調”として表れやすい。