今回は「採血による栄養解析(オーソモレキュラー2025年度版)」というテーマで、平島先生・秋山先生・スタッフ・友人の4人が参加。一般的な健康診断項目では見逃されがちな“低い側の数値”の重要性を解説していきます。

    平島医師
    平島医師
    みんなが健診で見ているAST・ALTとか、あれってそもそも何だろうって思う人って多いんじゃないでしょうか?? “基準値”だから安心、と考えてしまう人が多いですが、実はそこに落とし穴があるんですよね。
    秋山医師
    秋山医師
    そもそも血液検査で見ているAST、ALT、γ-GTP、LDH、アミラーゼ、リパーゼ、ALP、CKなどは逸脱酵素と呼ばれるたんぱく質で、本来は細胞内で働く酵素が細胞の破壊や膜の透過性亢進によって血中に漏れ出す。 つまり高い数値は臓器の障害で血液中に逸脱酵素が流出したことによります。基準値よりも高くなったときには臓器の障害を考えるのが従来の血液検査の見方です。しかし、栄養解析の視点では“低い側”のデータこそ重要なんです。
    平島医師
    平島医師
    それでは我々とスタッフ、友人の採血解析の結果を見ながら解説していきましょう!!

    「基準値=正常値」ではない? その本当の意味

    血液検査の結果を見ると、H(高値)やL(低値)の文字が並び、

    多くの人は「数値が高いが悪い」「数値が低いなら大丈夫」と思いがちです。

    しかし、この“基準値”という概念は、必ずしも「健康の指標」ではありません。

    平島医師
    平島医師
    ほとんどの人が「基準値=正常値」だと思っていますが、あくまで統計的な範囲なんです。実際には検査会社が20〜50人程度のデータから上下2.5%を除いた“95%の範囲”を基準として設定しています。つまり、少人数で作られた“目安”にすぎないんです。

    また、検査会社によって数値のばらつきもあり、年齢層の若い人を母集団に設定しているケースも多く、中高年層にとっては必ずしも“理想の健康値”とは言えません。
    つまり「H(高値)やL(低値)の判定」はあくまで機械的に判断されたラベルにすぎず、医師の目で見て判断することが大切なのです。

    オーソモレキュラー栄養医学では、病気の有無ではなく“細胞がどれだけ元気に働いているか”を血液データから読み解きます。特に注目すべきは「たんぱく質代謝」の評価です。

    年1回の健診や体調変化・治療前後に行う血液検査。肝腎機能、貧血、糖・脂質、炎症や栄養状態を確認し、病気の早期発見につながります。

    たんぱく質はすべての基礎

    人間の体の約60%は水分、残り40%のうち半分はたんぱく質で構成されています。
    筋肉・骨・血液・ホルモン・酵素・皮膚・髪・消化管など、ほとんどがたんぱく質を原料としており、これが不足すると全身の機能が低下してしまいます。

    平島先生は「血となり肉となる、最も重要な栄養素」と強調します。

    総たんぱく(TP)で“体のベース”を確認

    • 基準値:6.7〜8.3 g/dL
    • 理想値:7.1〜7.5(栄養学的観点)

    総たんぱくが低い場合、糖質過多やたんぱく質不足が考えられます。
    糖質制限を行い、体重1kgあたり1.5〜2gのたんぱく質の摂取意識することが理想です。
    ただし、脱水や肝機能異常などでも数値は変動するため、単独ではなく他項目とのバランスを見ます。

    実際の測定では、

    平島先生:7.5g/dL

    秋山先生:7.3g/dL

    スタッフ:8.1g/dL

    友人:7.5g/dLと

    全員が良好な範囲でした。
    「やはり意識して摂っていると結果に出るね」と笑いながら振り返ります。

    尿素窒素(BUN)で“代謝の実力”を見る

    尿素窒素は、たんぱく質が分解された最終産物です。
    一般的には腎機能を見る項目ですが、オーソモレキュラーでは「たんぱく質摂取・代謝の指標」として重要視します。

    • 理想値:15〜22 mg/dL
    • 15未満:たんぱく質不足またはビタミンB群不足の可能性
    秋山医師
    秋山医師
    BUNが低い人は、食事のたんぱく質が少ないか、代謝に必要なビタミンB群が足りない。逆に高すぎる場合は、腎機能の低下や脱水、消化管出血も疑います。

    実際の結果では…

    平島先生:21.7mg/dLと理想値内。

    秋山先生:11mg/dLとやや低め。
    「昼食のたんぱく質が足りていないかも」と自己分析。

    スタッフ:10mg/dL

    友人:14mg/dLと

    こちらもたんぱく質不足傾向が見られました。

    γ-GTPとBUNの“バランス”で脂肪肝を見抜く

    意外なポイントが、BUNとγ-GTPの関係性
    秋山先生によると、「この2つの数値が近いほど理想的」とのこと。

    もしγ-GTPがBUNより極端に高い場合、脂肪肝や炎症の存在が疑われます。

    実際のデータでは、

    平島先生:BUN21.7mg/dL/γ-GTP 33

    秋山先生:BUN11mg/dL/γ-GTP 17

    スタッフ:BUN10mg/dL/γ-GTP 72

    友人:BUN14mg/dL/γ-GTP 98

    後者2名は典型的な脂肪肝パターン。

    「簡単に診断できちゃいましたね(笑)」と撮影現場で苦笑い。
    日常的に飲酒や糖質過多の傾向がある人は、まさに要注意ポイントです。

    たんぱく質不足がもたらす“静かな不調”

    たんぱく質が不足すると、筋肉量の低下だけでなく、
    酵素やホルモンの材料が不足し、次のような全身症状が現れる可能性があります。

    • 消化酵素不足による胃もたれ・逆流・食後のだるさ
    • 代謝酵素の減少による疲労感・冷え
    • 抗酸化酵素の低下による老化の促進・肌トラブル
    • ホルモン低下による活力の喪失・元気のなさ
    • 免疫機能低下による風邪をひきやすくなる傾向

    実際、スタッフからも「最近食後に逆流っぽさを感じる」との声もあり、秋山先生は「消化酵素が落ちているかもしれませんね」と分析しました。

    平島先生&秋山先生の結論:たんぱく質は“体の元気度”の要。総たんぱく/アルブミン/BUNにも現れるから最優先と語る。

    まとめ:血液検査を“栄養の鏡”として見る

    血液検査の結果は「病気があるかないか」だけを見るものではなく、
    体の栄養バランスや代謝状態を映す“鏡”でもあります。

    「高い(高値)や低い(低値)」という記号の裏に、
    ・食事バランス
    ・ビタミン・ミネラルの代謝力
    ・細胞の元気度
    といった情報が隠れています。

    平島先生はこう締めくくります。

    平島医師
    平島医師
    「健康診断の紙を“異常なし”で終わらせるのではなく、 その中の“低い側”を見て、自分の体のサインを読み取ってほしい。 血液データには、未病の段階で気づけるヒントがたくさんあるんですよ!

    オーソモレキュラーの栄養解析は、まさにそのための羅針盤。
    これからの健康管理は、「異常値を見る」から「低い値を読む」時代へと変わりつつあります。

    次回の中編は…

    AST/ALT/γ-GTPなどの酵素項目を中心に、ビタミンB6との関係、LDL・HDLコレステロール、ChE・MCVといった肝の合成能や赤血球指標、さらにクレアチニン・尿酸など腎機能や代謝のヒントになる数値を、平島先生、秋山先生とスタッフの実測例とともにやさしく整理します。

    血液検査,健診
    血液検査で栄養状態の手がかりを探る|2025年版解説 「基準値=安心」じゃない?血液の“低い側”を見る理由 No.565 前編

    📌この記事は たまプラーザ南口胃腸内科クリニック/福岡天神内視鏡クリニック の医師監修のもと作成しました。
    栄養やサプリメントの利用については、基礎疾患や持病のある方は必ず主治医にご相談ください。

    用語解説

    基準値(参考基準範囲)
    検査会社が集めたデータの“真ん中95%”の範囲。統計上の目安であって「健康の理想値」とは限りません。ラボや母集団によっても基準値は変わります。

    理想値(栄養学的目安)
    臓器障害の有無ではなく“細胞が元気に働く”ための最適域。本文ではTP7.1〜7.5 g/dL、BUN15〜22 mg/dLを目安として提示。

    逸脱酵素
    本来は細胞内で働く酵素が、細胞ダメージなどで血中に“漏れ出た”もの。AST、ALT、γ-GTP、LDH、ALP、CK、アミラーゼ、リパーゼなど。

    AST/ALT
    肝細胞や筋肉に多い酵素。高値は肝障害や筋障害のサイン。オーソモレキュラーでは“低めの推移”も栄養状態(たんぱく・B群)を考える手掛かりに。

    γ-GTP
    胆道系やアルコールの影響を反映しやすい酵素。高値は脂肪肝、飲酒、胆汁うっ滞などを示唆。

    総たんぱく(TP)
    血清中のアルブミン+グロブリンの総量。低値はたんぱく不足や糖質過多を示唆。脱水で見かけ上高くなるため他項目と併読が必須。

    尿素窒素(BUN)
    たんぱく分解の最終産物。腎機能指標として知られるが、栄養解析では「摂取・代謝の実力」をみる指標。低値はたんぱく/ビタミンB群不足、高値は脱水・腎機能低下・消化管出血などを考える。

    ビタミンB群(とくにB6)
    アミノ酸代謝や酵素反応を助ける補因子。不足すると摂ったたんぱくをうまく“回せず”、BUN低値や疲労感などにつながることがある。

    脂肪肝
    肝細胞に脂肪がたまった状態。糖質過多・飲酒・体重増加と関連。本文ではγ-GTPが相対的に高い人に疑い。

    BUN/γ-GTPバランス
    本文の実地的コツ。両者が“近い”ほど理想的、γ-GTPがBUNより大きく乖離して高い場合は脂肪肝や炎症を疑う目安に。

    たんぱく質代謝
    筋肉・酵素・ホルモン・皮膚粘膜など全身の材料と機能の基盤。不足は消化不良、だるさ、免疫低下、肌トラブルなど“静かな不調”として表れやすい。