ここからは、この会話に登場した「テロメア」について、最新の医学的知見を含めながら詳しく解説していきます。
テロメアとは?靴ひもの“先端カバー”のような存在
テロメアとは、染色体の末端にある特殊な構造で、例えるなら靴ひもの先端についているプラスチックのキャップのようなものです。
あのキャップがあるおかげで靴ひもはバラバラにならず、機能を保てますが、テロメアもまさに同じ役割を果たしています。

DNAコピーの“弱点”を補う仕組み
細胞が分裂するとき、DNAは必ずコピーされます。しかし構造上、DNAの端だけは正確に複製しにくいという弱点があります。そのため、端の部分が「不要」と判断されて削られてしまうことがあるのです。
この削られる領域を守るために存在するのがテロメアです。
● テロメアが短くなると起こること
テロメアは細胞分裂のたびに少しずつ短縮します。これが一定以下になると、
- 細胞老化(細胞の働きが弱まる)
- 発がんリスク上昇
- 慢性炎症の進行
- 心血管疾患リスク増加
など、健康に直接的な影響が出てしまいます。
なぜテロメアは短くなるのか?老化の根本メカニズム
先生たちの話にもあるように、テロメアの短縮は「長生きしている限り避けられない現象」です。
その理由は明確で、細胞が生きるために何度も分裂する構造そのものにあります。
① 細胞分裂のたびに“削れる”構造
DNAの複製は完璧ではなく、特に端はコピーしづらい構造のまま進化してきました。
そのため、テロメアは細胞分裂のたびに消耗する運命にあります。
② 長生きほどテロメアは短くなる
心臓、血管、皮膚、腸など、常に入れ替わっている細胞ほど分裂回数が多く、テロメア消耗も早いのが特徴です。
③ 末端には重要な遺伝情報がある
「端だからどうでもいい部分」というわけではなく、生命維持に不可欠な遺伝情報も多く含まれています。
そのため、この領域を守るテロメアの存在は非常に重要です。

■ テロメアを守る生活習慣とは?
秋山先生によると、テロメアの短縮は 生活習慣の改善で“遅らせる”ことが可能です。
特に注目されているのが、
● 抗酸化物質を豊富に含む食事
酸化ストレスはテロメアを短くする最大の要因の1つ。
抗酸化物質は体内のサビを抑えてDNA損傷を減らす働きがあります。
動画内で紹介された具体的な食品をまとめると──
◆ 高い抗酸化力を持つスパイス・ハーブ
- クローブ
- ペパーミント
- スターアニス など
少量で強い抗酸化力を発揮するため、日常の食事にも取り入れやすい食品群です。

◆ ナッツ・種子類
- 亜麻仁粉
- 栗
- ヘーゼルナッツ
- ピーカンナッツ
- ゴジベリー
ビタミン・ミネラル・良質な脂質も同時に摂れるため、健康効果の相乗効果があります。
ベリー類(抗酸化の代表格)
- アロニア
- ブラックベリー
- ラズベリー
- ブルーベリー
- プルーン
色が濃い果物ほど抗酸化力が強いのが特徴です。
◆ 野菜・豆類・その他
- 赤キャベツ
- ケール
- アーティチョーク
- ほうれん草
- 赤玉ねぎ
- チコリー
- 赤インゲン豆
- 小豆
- ピント豆
- ダークチョコレート
- コーヒー
寒冷地で育つ野菜は特に抗酸化力が高い傾向があります。
まとめ:テロメアを守ることは“未来の健康”を守ること
- テロメアはDNAの端にある“保護キャップ”
- 細胞分裂のたびに短くなるのは避けられない
- 短縮すると老化・疾患リスクが増加
- 抗酸化物質を含む食品で短縮を防ぎやすくなる
今回の前編では「テロメアとは何か」「老化とどう関係するか」「どう守るか」について解説しました。
後編では、食べ物意外のテロメア維持のメカニズムや、研究で分かってきた“若返りの可能性”について取り上げていきます。
📝 用語解説
- テロメア
染色体の末端を保護する配列。靴ひもの“先端キャップ”のようにDNAが擦り切れるのを防ぐが、分裂のたび短くなる。 - 末端複製問題
DNAの構造上、鎖の端は完全に複製できず短縮が生じる現象。テロメアはこの“削れ”を受け止める緩衝帯。 - テロメラーゼ
短くなったテロメアを延長する酵素。生殖細胞・幹細胞で活性が高く、体細胞では低い(加齢でさらに低下)。 - 細胞老化(セネッセンス)
分裂能力や機能が落ちた状態。テロメア短縮やDNA損傷で誘導され、炎症性因子を放出しやすい。 - ハイフリック限界
体細胞が分裂できる回数の理論上の上限。テロメア短縮が限界に達すると分裂停止に至る。 - 酸化ストレス
活性酸素(ROS)による酸化ダメージが防御力を上回った状態。テロメア短縮とDNA損傷を促進。 - 抗酸化物質
活性酸素を中和する成分。ポリフェノール、ビタミンC・E、カロテノイド、スパイス類などが代表。 - DNA損傷
紫外線・炎症・酸化などで生じる遺伝子の傷。修復が追いつかないとテロメア短縮や発がんリスク上昇に関与。 - 慢性炎症(インフラメイジング)
低度の炎症が長期に続く加齢関連現象。テロメア短縮を加速し、心血管・代謝疾患の土台となる。 - 細胞ターンオーバー
組織の入れ替わりサイクル。皮膚・腸・血管内皮など分裂頻度が高い組織ほどテロメア消耗が速い。