帯状疱疹は「痛い病気」というイメージが強いですが、近年の研究では認知症の発症リスクとも関係している可能性が報告され、医療現場でも注目を集めています。
本記事では、帯状疱疹の基本から、ワクチンの種類、そして「なぜ認知症予防につながる可能性があるのか」までを、医師の解説をもとにわかりやすく整理します。
帯状疱疹とは?水ぼうそうウイルスが再び目を覚ます病気
帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)によって起こる病気です。
このウイルスは、子どもの頃にかかる「水ぼうそう」の原因でもあります。
水ぼうそうが治ったあとも、ウイルスは体内から完全に消えるわけではなく、神経の中に潜伏し続けます。
加齢、ストレス、過労、病気などで免疫力が一時的に低下したタイミングで、再び活性化すると帯状疱疹として発症します。
特徴的なのは、
- 体の片側に帯状に現れる赤い発疹
- ピリピリ、チクチクとした強い神経痛
です。
中には、皮疹が出る前に痛みだけが先行し、「原因不明の腹痛」「背中の痛み」として受診される方も少なくありません。

帯状疱疹後神経痛と発症リスクの高さ
帯状疱疹で特に問題となるのが、帯状疱疹後神経痛(PHN)です。
これは皮膚症状が治ったあとも、神経の痛みが長期間残る状態を指します。
秋山先生
「ブロック注射が必要になるほど、日常生活に支障が出る方も実際にいらっしゃいます」
日本では、
- 50歳以上の約3人に1人が一生に一度は帯状疱疹を発症するとされ
- 発症率は認知症よりも高い
というデータもあります。
決して珍しい病気ではなく、「誰にでも起こり得る身近な病気」と言えるでしょう。
帯状疱疹ワクチンは2種類|効果と違いを正しく理解する
現在、日本で使用できる帯状疱疹ワクチンは2種類あります。
● 生ワクチン
- 接種回数:1回
- 予防効果:約50%
- 比較的安価
● 組換えワクチン
- 接種回数:2回(間隔を空けて)
- 予防効果:約97%
- 自費診療(約4万円前後)
平島先生
「私自身は、予防効果を重視して組換えワクチンを接種しました」
2025年4月からは、65歳を対象に定期接種が始まり、以降は5歳刻みで公費助成の対象となります。ただし、その年齢以外では自費となるため、事前の確認が重要です。

なぜ帯状疱疹ワクチンが認知症予防につながるのか
近年、海外の研究で注目されているのが、帯状疱疹ワクチンと認知症リスクの関係です。
イギリス・ウェールズで行われた大規模研究では、
帯状疱疹ワクチンを接種した人は、接種していない人に比べて認知症発症リスクが約20%低下していました。
考えられているメカニズムは主に2つです。
① ウイルス再活性化による脳への炎症を防ぐ
帯状疱疹ウイルスは、再活性化すると
- 脳血管の炎症
- 微小な脳梗塞
- 軽度の脳炎
を引き起こす可能性があります。
ワクチンによって再活性化を防ぐことで、神経や脳へのダメージを間接的に抑えると考えられます。
② 免疫の老化を抑え、慢性炎症を防ぐ
加齢とともに免疫機能は低下し、慢性的な炎症状態が続きやすくなります。
ワクチン接種や腸内環境の改善によって免疫が刺激されることで、免疫の老化(免疫老化)を抑制する可能性が指摘されています。
50歳を過ぎたら「予防」という選択肢を
帯状疱疹ワクチンは、
- 帯状疱疹そのものの発症を防ぐこと
- 発症した場合でも、強い神経痛が残るリスクを減らすこと
- さらに、認知症リスク低下の可能性が示唆されていること
といった点から、将来の生活の質を守るための重要な予防策のひとつと考えられます。
帯状疱疹は年齢とともに発症リスクが高まる病気であり、いったん発症すると日常生活に大きな影響を及ぼすことも少なくありません。
だからこそ、症状が出てから対応するのではなく、事前に備えるという考え方が大切になります。
50歳を過ぎたら、ご自身の体調や生活環境を踏まえながら、主治医と相談し、帯状疱疹ワクチンという予防の選択肢について前向きに検討してみてはいかがでしょうか。
📝 用語解説
帯状疱疹
水ぼうそうの原因ウイルスが再活性化して起こる、強い痛みと発疹を伴う病気。
水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)
水ぼうそうと帯状疱疹の原因となるヘルペスウイルスの一種。
再活性化
体内に潜伏していたウイルスが、免疫低下をきっかけに再び活動を始めること。
帯状疱疹後神経痛(PHN)
帯状疱疹が治った後も長期間続く神経の痛み。
生ワクチン
弱毒化した病原体を使用したワクチン。1回接種で済む。
組換えワクチン
ウイルスの一部成分のみを使ったワクチン。高い予防効果が特徴。
免疫力
体内に侵入した病原体を排除する体の防御機能。
免疫老化
加齢によって免疫機能が低下し、炎症を抑える力が弱くなる現象。
慢性炎症
自覚症状が少ないまま体内で続く炎症状態。認知症との関連が指摘されている。
微小脳梗塞
小さな血管が詰まることで起こる脳のダメージ。自覚症状がないことも多い。