今回の内視鏡知識シリーズですが、普段の診療で患者さんから質問される内容についてお答えしていきたいと思います。
私たちは普段の診療中に、よく整腸剤について質問を受けます。それだけ整腸剤に興味がある患者さんが増えてきたということですね。

整腸剤については色んな質問を受けるのですが、今回はその中でも特に問い合わせが多い以下の3つについてお答えします。
- 整腸剤は食前食後のいつ飲んだ方が良いのか?
- 整腸剤に含まれている菌は1種類だけ摂れば良いのか?
- 整腸剤は下痢にも便秘にも効果があるのか?
それでは1つずつ解説していきましょう。
1 整腸剤は食前食後のいつ飲んだ方が良いのか?

これは皆さんも疑問に思っている方は多いのではないでしょうか。
それでは解説していきたいと思います。
ドラッグストアなどで売っている整腸剤はほぼほぼ生菌製剤です。つまり、生きた菌が錠剤の中に含まれています。
そんな生菌を使用した整腸剤の説明書には、だいたい
「食後に服用してください」
と書いてあります。
これは乳酸菌やビフィズス菌は胃酸に弱いため、胃酸が薄まっている食後の方が良いからなんですよね。
それでは、整腸剤の飲み方に関連する論文がないか調べてみると、面白い論文がありました。
整腸剤の乳酸菌やビフィズス菌は、食事30分後よりも、食事中や食前(30分前)に飲んだ方が菌の生存率は高くなるという報告があります。
Tomkins TA,et al: “The impact of meals on a probiotic during transit through a model of the human upper gastrointestinal tract” Benef Microbes,2(4):295-303,2011
つまり、これらのことを踏まえると、整腸剤は食前に飲んでも食後に飲んでもあまり変わりはないような気がしますね。
私はいつも「どのタイミングで飲んでもいいですよ」と伝えていますが、気になる方は飲んでいる整腸剤の説明書通りにするのが無難です。
ちなみに、1錠の菌数が多い整腸剤は、だいたい死菌を使用しています。。
乳酸菌は以前から、死菌でも十分に効果があると言われていました。これは、乳酸菌が免疫力を上げる効果が得意であるからです。
しかしながら下痢や便秘を治す整腸作用が得意分野であるビフィズス菌も、死菌でも効果があることが報告されています。
Andresen V,et al,” Heat-inactivated Bifidobacterium bifidum MIMBb75 (SYN-HI-001) in the treatment of irritable bowel syndrome: a multicentre, randomised, double-blind, placebo-controlled clinical trial” Lancet Gastroenterol Hepatol,5:658-666,2020
当然ですが、死菌を使用した整腸剤は、食前、食後に関わらず好きなタイミングで飲んで大丈夫です。
結論としては、食前、食後関係なくどのタイミングで飲んでも特に問題はありません。
2 整腸剤に含まれている菌は1種類だけ摂れば良いのか?

まずいきなり答えからですが、私は患者さんに
「複数の菌を摂った方がより効果的です!」
と答えています。
ちなみに論文では、患者さんの症状によって、1種類のみの菌の整腸剤で十分であるケースと、複数の種類の整腸剤の方が効果があるというケースがあるという報告があります。
McFarland LV “Efficacy of Single-Strain Probiotics Versus Multi-Strain Mixtures: Systematic Review of Strain and Disease Specificity.” Dig Dis Sci,66:694-704,2021
整腸剤を飲む目的って人それぞれです。
- 腸内環境を良くしたい!
- 下痢や便秘などの便通異常を改善したい!
- 免疫力を上げて病気にならない体を作りたい!
こんな感じで色々あると思います。
でも、できることならばこれら全て叶えたいと思いませんか?
そうであれば、1種類の菌よりも複数の種類の菌を摂った方が良いわけです。
それでは、どのような菌を飲めば良いのでしょうか?
それは
「小腸に住み着きやすい菌と、大腸に住み着きやすい菌を摂る」
です。
小腸に住み着きやすい菌の代表と言えば、乳酸菌です。
乳酸菌は酸素がある小腸によく住み着いていると言われています。
乳酸菌を摂る目的は、主に免疫力の強化です。
小腸にはパイエル板という、免疫細胞の基地みたいな場所が無数にあります。
乳酸菌を摂ることにより、乳酸菌を作り出している核、線毛、細胞膜などの成分が、マクロファージや樹状細胞などの免疫細胞を活性化すると言われています。
次に大腸です。
大腸に住み着きやすい菌の代表といえば、ビフィズス菌です。
ビフィズス菌は酸素下で生きるのが難しいので、酸素が非常に少ない大腸に住み着いています。
ビフィズス菌の得意分野は、主に整腸作用です。
ビフィズス菌は、乳酸と酢酸を産生するのですが、これらが主に体内で作用します。
これにより大腸内の腸内環境が良くなり、下痢や便秘などの症状を改善させます。これが整腸作用です。
以上より、乳酸菌とビフィズス菌が入っているような整腸剤を摂るとより効果的です。
3 整腸剤はなぜ下痢にも便秘にも効果があるのか?

我々医師は、下痢にも便秘にも整腸剤をよく処方しています。
下痢と便秘は全く真逆の症状ですよね。それなのに整腸剤はどちらにも効果があるとはどういうことなのでしょうか?
まずは下痢に効果があるメカニズムから説明します。
下痢と言えば、一番多いのは感染性腸炎による下痢ですよね。
ウイルスや細菌が腸内に侵入し、腸内で繁殖して炎症を起こして下痢症状が出現します。
このような場合、整腸剤を飲むことでどのような作用があるのでしょうか。
- ウイルスや病原菌が、腸管上皮細胞へ付着して増殖するのを防ぐ
- 腸管のバリア機能を強くする
- 炎症で荒れた腸を修復する
- 腸管粘膜透過性亢進による下痢症状を和らげる
- 腸の知覚過敏による腹痛や腹部膨満などの症状を和らげる
主にこういった作用が期待できます。
病原菌が侵入した腸炎による下痢に効果があるのは間違いないですね。
そして最近では、過敏性腸症候群による下痢の方も非常に多いです。日本人は特にこの過敏性腸症候群が多いと言われています。
過敏性腸症候群は、腸の知覚過敏と腸粘膜の微小な炎症により起こってきますので、そういう意味では整腸剤は過敏性腸症候群による下痢も効果があると言われています。
以上が、整腸剤の下痢に対する効果です。
それでは次に、なぜ整腸剤が便秘に効果があるのか考えてみます。
そもそも、便秘の人って便が長時間ずっと腸の中に停滞していますよね?これにより腸内環境が悪くなってます。なぜ悪くなるんでしょうか?
これは、善玉菌と悪玉菌の増殖スピードと関係しています。
一般的に、善玉菌の方が増殖スピードは早いです。2倍に増殖するのに2~3時間と言われています。
対して、悪玉菌は、2倍に増殖するのに48時間もかかると言われているんです。
普通は、悪玉菌が増殖する前に排便することで、悪玉菌を外に出してしまえばいいのですが、便秘の人は便がずっと腸内にとどまってますので、悪玉菌を外に出せないんですよね。
これにより、いつもより悪玉菌がどんどん増殖して、悪玉菌の縄張りが増えてしまい、腸内環境が悪くなってしまうんです。
加えて、便秘の人は、メタンを産生する菌が増えやすいと言われています。
腸内でメタンが産生されると腸のぜん動運動が抑制されます。これによりさらに便秘になりますし、腹痛や腹部膨満などの症状が出やすくなるんです。
ですので、便秘の人が整腸剤を飲むことにより、
- 悪玉菌優位になっている腸内細菌を、健全な善玉菌優位の腸内細菌叢に戻してくれる
- 腸のぜん動運動を正常化することにより排便を促す
- メタンなどの腐敗物質産生菌を減らすことにより、腹痛や腹部膨満などの症状を改善してくれる
以上のような効果が期待できます。
いかがだったでしょうか。
整腸剤を飲む目的というのは、以前は、「下痢や便秘を治す」という、いわゆる整腸作用を期待していたのですが、現在は「健康を維持して長生きする」ために整腸剤を飲むというのがトレンドになっています。
ですので、特に症状がなくても、整腸剤をコツコツと毎日飲むことが重要です。
ぜひ自分の健康のため、長生きするために整腸剤をコツコツ飲みましょう。