柔らかい雑談から始まった今回のテーマ。「健康のためにいい」と語られることの多い16時間断食ですが、医学的には“注意すべき点”が多く存在します。本記事では、腸・血糖値・筋肉の観点からそのリスクを詳しく整理していきます。
なぜ16時間断食はつらい?
長時間絶食が引き起こす「血糖スパイク」の危険性
16時間断食は「長い絶食時間を設け、残りの8時間で食事をする」という方法です。一見シンプルですが、先生たちが最初に指摘したのは “血糖スパイク(血糖値の急上昇)”が起こりやすい という点です。
長時間の絶食後、最初の食事で炭水化物を摂ると、血糖値は急激に上昇します。その後、膵臓から大量のインスリンが分泌され、急激に血糖値が下がります。この乱高下によって、以下のような症状が起こります。
- 強い眠気
- だるさ
- 集中力の低下
- 低血糖症状(ふらつき、冷や汗)
また、インスリンが大量に分泌されると脂肪細胞に糖が取り込まれやすくなり、結果として 太りやすくなる ことも分かっています。
さらに、外食が多い人は要注意です。空腹が強いためガッツリ糖質中心の食事を選んでしまい、より血糖スパイクが起きやすくなります。
「健康のために始めた断食で、むしろ太ってしまう」というのは典型的な落とし穴です。

腸内環境は改善どころか悪化することも
断食によって善玉菌が減り悪玉菌が優位になる理由
今回のテーマでとても重要なのが 腸内環境の悪化リスク です。
実際に1ヶ月のファスティングを行った患者さんが、前後で腸内フローラ検査を受けたところ、驚くべき結果が出たそうです。
- 断食前:善玉菌が多くバランス良好
- 断食後:善玉菌が激減し、悪玉菌が大幅に増加
患者さんは「断食で腸がきれいになる」と信じていたため、大きなショックを受けたといいます。
●なぜ絶食で腸が乱れるのか?
腸内細菌は食物繊維やオリゴ糖といった“エサ”があってこそ生きていけます。
絶食が続くと…
- 善玉菌のエサが不足
- 善玉菌が減少
- 腸粘膜の機能低下
- 悪玉菌が増殖しやすくなる
「腸活」のための断食が、逆に腸を疲労させる例は実際に存在します。
筋肉減少(サルコペニア)のリスク
特に高齢者には危険性が高い理由
先生たちが強調していたのが 筋肉減少のリスク。
絶食が長くなると、体はエネルギー不足を補うために筋肉のたんぱく質質を分解してしまいます。
特に高齢者はもともとサルコペニア(筋肉量の低下)になりやすい状態です。
筋肉が減ると…
- 基礎代謝が落ち太りやすくなる
- 転倒リスクが上昇
- 疲れやすくなる
- 日常生活動作が低下
“健康のための断食が健康を損なう”という最悪の状況を招く可能性があります。
また、筋肉は糖代謝の大部分を担う組織のため、筋肉が減るほど 血糖値が安定しにくくなる という悪循環が生まれます。

16時間断食は続かない?
脱落しやすい背景と、12時間断食のススメ
視聴者や患者さんから寄せられる声の多くが…
- 「午前中まったく力が入らない」
- 「空腹で仕事にならない」
- 「イライラする」
- 「続けられなかった」
実際に16時間断食は“脱落率が高い”とされ、現実的に続けられる人は多くありません。
そんな中、先生たちが勧めるのは 12時間断食 です。
例えば…
- 夜20時までに食事を終える
- 翌朝8時に朝食を取る
これだけで12時間の断食が成立します。
ストレスなく毎日続けられるうえ、腸や筋肉への負担も少なく、日常生活への影響もほとんどありません。

16時間断食は“良い健康法”とは限らない
今回の解説をまとめると、16時間断食には以下のリスクがあります。
- 血糖スパイクにより血管が傷つく
- 低血糖症状によるだるさ・眠気
- 脂肪が蓄積し太りやすくなる
- 腸内環境悪化(善玉菌の減少)
- 筋肉量低下(サルコペニア)
- ストレスが大きく継続困難
もちろん個人差はありますが、多くの人にとって16時間断食は “無理のある健康法” です。
先生たちがたどり着いた結論はとてもシンプルでした。
「続けられる断食こそが健康的である」
「まずは12時間断食から始めるのがおすすめ」
体に無理をかけず、腸や筋肉を守りながら行う断食こそ、本当の意味での健康法です。
最後に:先生たちの雑談から見える“腸への興味と優しさ”
記事中盤には、内視鏡検査の話題や洗腸剤の味について盛り上がるシーンもありました。
「洗腸剤、意外と飲めますよね」
「うちは量を少なくしてるので飲みやすいと思いますよ」
「体型や便状況や年齢などでその人に合わせて変えていますからね」
など、患者さんへの気遣いや、腸を大切に思う姿勢が垣間見え、読者としても温かい気持ちになるやりとりでした。
📝 用語解説
16時間断食(16:8)
1日の摂食を8時間に限定し、残り16時間を絶食にする時間制限食。急な空腹後のドカ食いで血糖スパイクを招きやすい。
血糖スパイク
食後に血糖が急上昇し、その後急降下する現象。眠気・だるさ・動脈硬化リスク上昇などの原因。
インスリン
膵臓から分泌される血糖降下ホルモン。急上昇に対し過剰分泌されると脂肪蓄積を促し太りやすくなる。
反応性低血糖
高インスリン分泌の反動で血糖が急低下し、ふらつき・冷や汗・動悸などが出る状態。
腸内環境(腸内フローラ)
腸内細菌の総体。絶食が続くと“エサ”不足で善玉菌が減り、悪玉菌優位に傾きやすい。
善玉菌/悪玉菌
善玉菌は粘膜保護・抗炎症に寄与、悪玉菌は炎症や有害代謝物を増やしうる。食物繊維・発酵食品が鍵。
サルコペニア
加齢や低栄養で筋肉量・筋力が低下する状態。転倒・要介護リスクや基礎代謝低下を招く。
基礎代謝
生命維持に必要な最小エネルギー消費。筋肉減少で低下し、体脂肪が増えやすくなる。
12時間断食
例:20時〜翌8時を断食とする方法。睡眠時間を活用し、腸・筋肉・仕事への負荷が少ない現実的代替。