胃カメラ検査で生検と言われたら?悪性の確率は?知っておきたい正しい生検の知識

    胃カメラ検査で生検(せいけん)をしておくと言われ、「がんの可能性があるってこと?」「悪性の確率はどれくらい?」と不安になった方もいるのではないでしょうか。

    生検をしたからといって必ずしもがんが見つかるわけではありません。しかしながら、だからといってスルーしてしまうと、早期発見なら治せる重大な病気を見逃してしまう可能性があります。

    今回は、胃カメラの生検を行う理由、実際にがんと診断される確率、がんが見つからなかった場合でも検査を行うメリットなどについて解説します。

    胃カメラと生検でわかること

    胃カメラや生検は、病気の診断だけでなく、将来のリスクを見極めるためにも重要な検査です。ここでは、それぞれの検査でどのようなことがわかるのかを解説します。

    胃カメラで調べていること

    胃カメラは、口や鼻から内視鏡を入れて、食道・胃・十二指腸の中を直接観察する検査です。正式には上部消化管検査と呼ばれます。

    胃カメラは、「症状の原因を調べて、病気を診断するために行う場合」と「症状がない段階で、病気を早期発見するために行う場合」があります。

    ■症状がある場合

    胸焼けや胃痛、貧血や嘔吐などの症状があるときに、原因を調べるために行います。胃カメラでわかる主な病気は、以下のとおりです。

    • 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
    • 急性胃炎・慢性胃炎
    • 逆流性食道炎
    • ポリープ
    • 胃がん・食道がん
    • 胃アニサキス(食中毒)

    胃潰瘍や十二指腸潰瘍であれば胃酸の分泌を抑える薬を服用する、ピロリ菌によって胃炎が起こっている場合は抗菌薬を服用するなど、病気に応じて治療方針を決定します。

    ■症状がない場合(病気の早期発見目的)

    胃カメラは、まだ症状が出ていない段階でも実施されることがあります。具体的には以下のようなケースです。

    • 胃がん検診を受ける
    • ピロリ菌が感染していないか確認したい
    • 健康診断やバリウム検査で異常を指摘された

    胃がん検診では50歳から2年に1度、バリウム検査(胃部X線検査)と胃カメラのどちらかを受けることが推奨されています。胃がんの初期段階では自覚症状がないことが多く、早期発見のためには症状がない段階で検査を受ける必要があるのです。

    また、ピロリ菌は幼少期に家族から感染するケースが多いとされています。そのため、家族にピロリ菌感染者がいる場合には、採血でのピロリ抗体検査や、尿素呼気試験、胃カメラを行うことがあります。

    生検とは?

    生検とは、検査中に組織の一部をごく少量採取し、病理検査(顕微鏡での詳細な分析)にまわすことです。胃カメラ検査の途中で、食道・胃・十二指腸のどこかにポリープやびらん(粘膜の表面がただれて下の組織が露出した状態)、色の変化などがみられた場合、確認のために粘膜の一部を採取します。

    胃の壁は大きく分けて粘膜・粘膜下層・筋層・漿膜下層・漿膜の5層になっており、胃がんは最も内側の粘膜にできて、少しずつ外側へと広がっていきます。胃カメラ検査時には、「一部を採って検査に出しますね」といった説明があるでしょう。検査に出すと、病理医が顕微鏡で細胞組織の状態を分析することで、胃がんの有無や悪性度などがわかります。

    胃カメラ検査で生検を行う理由

    胃カメラ検査で生検を行うのは、疑われる病気を特定するためです。胃カメラで確認できる、粘膜の見た目だけでは良性か悪性かの判断が難しい場合があります。正確に診断をするためには、粘膜の一部を詳しく調べる必要があるのです。

    また、胃がんには「分化型」や「未分化型」といった組織型があり、それぞれ進行のスピードや適応となる治療方法が異なります。たとえば、悪性でも「分化型」は細胞同士が集まりやすい性質があるため、早期に発見した場合は内視鏡で取り除ける可能性があります。生検は、単にがんかどうかを調べるだけでなく、治療方針を決定するうえでも必要な検査です。

    胃カメラの生検をしたときの悪性の確率は?

    生検を受けた人のうち、実際に「がん」と診断される割合は医療機関によって異なりますが、数%程度であることが多いです。参考までに、金沢市医師会でまとめられた胃カメラ受診者数と生検数のデータを以下に引用します。

    生検率○%の
    医療機関
    受診者数生検数がん発見数生検をした人のうちがんと診断された割合
    0-5%未満3,9939899.18%
    5-10%未満4,404310165.16%
    10-15%未満3,610427214.92%
    15-20%未満3,084498102.00%
    20%以上2,189587132.21%
    17,2801,920693.59%

    上記のデータを見ると、「生検をした人のうち、がんと診断された人」の割合は、2〜9%程度であることがわかります。

    ただし、どの程度で生検を行うのかは医師によって異なるため、「生検をする」というだけでは「悪性の可能性が高い」とも「低い」ともいえません。

    胃カメラで行う生検の役割

    生検には、がんの早期発見だけでなく、病気のリスクを知り、将来の健康へとつなげる役割もあります。

    生検はスクリーニングのために行う

    生検は、「怪しい部分を確かめる」ために行うスクリーニング検査といえます。胃カメラの観察だけでは、良性なのか、悪性なのかを判断できません。そのため、採取した組織を病理検査にかけなければ、最終的な診断ができないのです。

    生命を守る医療では、多くの人を調べ、少数の「早期の病気」を見つけ出すことが重視されます。たとえば、地震速報は「揺れを感知したら念のため知らせる」仕組みです。実際には大きな地震にならないことも多いですが、万が一に備えて警告することで、実際に大きな地震が起こったときに被害を最小限に抑えられます。

    胃カメラの生検も同様に、見た目で少しでも気になる部分があれば、組織を採って詳しく調べます。その結果、万が一がんだった場合でも見逃さず、早期治療につなげられるのです。

    炎症・萎縮・ピロリ菌感染の痕跡などが見つかる場合がある

    胃カメラの生検によって、がんではなかった場合でも、ほかの病気や胃がんのリスクを発見できる場合があります。たとえば、胃の炎症や萎縮、ピロリ菌感染の痕跡などです。

    これらは放置すると、将来的に胃がんのリスクが高まる恐れがあります。ピロリ菌が陽性だった場合は、除菌治療によって胃がんや胃炎になるリスクを下げることも可能です。

    また、胃がんは初期段階では自覚症状がないことが多く、症状が出たときには進行しているケースも珍しくありません。初期に発見できれば、内視鏡を使って病変を切除するだけで治療が完了するケースもあります。

    適切なフォローアップが可能になる

    生検の結果、がんでなかったとしても、定期的に胃カメラで経過をみていくことが大切です。再検査が推奨される頻度は、所見によって異なりますが、リスクが高い方は短期間での経過観察が推奨されます。

    たとえば、ピロリ菌感染や胃炎があった場合は、胃がんになるリスクがあるため、少なくとも1〜2年に一度は胃カメラを受けた方がよいとされています。早期胃がんの内視鏡治療を受けた方は、1年に一度受けた方がよいでしょう。

    定期的にチェックすることで、病気の早期発見や再発予防につながる適切なフォローアップが可能になります。

    まとめ:早期発見・治療のために胃カメラが重要

    胃カメラの生検は、粘膜の見た目だけでは判断が難しい場合に、良性か悪性かを正確に診断するために行います。がんの広がり方を示す「組織型」もわかるため、治療方針を決めるためにも必要な検査です。

    生検の結果、悪性ではなかった場合でも決して無駄ではありません。胃炎や萎縮、ピロリ菌の痕跡など、将来の胃がんにつながる所見が見つかることがあります。早期に発見して適切に対処すると、胃がんになるリスクを低減できるでしょう。

    胃がんは初期段階では自覚症状がほとんどなく、早期発見できれば内視鏡治療だけで取り除ける可能性も高まります。生検の結果にかかわらず、医師が推奨する頻度で定期的に胃カメラ検査を受け、胃の健康状態をチェックしていくことが大切です。