平島医師
平島医師
スーパーに行くと、油の種類が本当に多いですよね。正直、どれを選んだらいいのか分からなくなりません?
秋山医師
秋山医師
分かります。『コレステロール0』とか『サラダ』とか書いてあると、なんとなく良さそうに見えますよね。
平島医師
平島医師
実際、流し台の下に昔から置いてある定番の油を、そのままずっと使っているご家庭も多いと思います。
秋山医師
秋山医師
でも今日は、“腸にとってどうか”という視点で油を見直してみましょう、という話ですよね。

こうした何気ないやり取りから、今回のテーマは始まります。
油は毎日使うものだからこそ、「なんとなく」で選び続けている人も多いはずです。しかし実は、その選び方が腸内環境や体調不良に深く関係している可能性があります。

    油は「太る原因」ではなく、体を作る材料

    油というと、「太る」「体に悪い」というイメージを持たれがちです。しかし、医師の視点から見ると、油(脂質)は炭水化物・たんぱく質と並ぶ三大栄養素のひとつです。

    私たちの体は約37兆個の細胞からできていますが、その細胞一つひとつを包んでいる細胞膜の主成分が脂質です。
    細胞膜は、栄養や情報の出入り口。ここが硬すぎても柔らかすぎても、体の機能はうまく働きません。つまり、普段どんな油を摂っているかで、細胞膜の“質”が変わるんですよね。

    特に重要なのが脳です。
    脳は乾燥重量の約60%が脂質でできている、いわば「脂のかたまり」。
    また、性ホルモンやストレスに対抗するホルモン、活性型ビタミンDなども、脂質やコレステロールを材料に体内で作られています。

    油は「減らすもの」ではなく、「質を選ぶもの」なのです。

    腸と油の深い関係|慢性炎症とリーキーガット

    腸活という観点から見ても、油の質は非常に重要です。
    質の悪い油、あるいは使い方を間違えた油を摂り続けると、体の中で静かに炎症が広がる「慢性炎症」の原因になり得ます。慢性炎症は、気づかないうちに症状が進んでいきます。

    慢性炎症は、アレルギー、動脈硬化、糖尿病、がん、認知症など、さまざまな疾患との関連が指摘されています。
    そして腸の分野でよく話題になるのが、リーキーガット(腸漏れ)です。

    リーキーガットとは、本来は体内に入るべきでない物質が、腸のバリア機能低下によって血中に漏れ出してしまう状態のこと。
    この腸のバリア機能を支えているのも、細胞膜=脂質の質なのです。

    油の選び方ひとつで、腸の守りが弱くなる可能性もあるということになります。

    気づかないうちに進む“慢性炎症”。静かに体へ負担が蓄積します

    飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸|まずはこの違いを理解する

    油の話で必ず出てくるのが、「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」です。

    飽和脂肪酸とは

    飽和脂肪酸は、化学構造的に炭素の鎖が水素でぎっしり満たされ、安定した構造をしています。
    このため、常温で固体になりやすく、熱に強く酸化しにくいのが特徴です。

    代表的なものは、

    • バター
    • 牛脂・豚脂(ラード)
    • ココナッツオイル
    • パーム油

    お肉の白い油を想像するとわかりやすいですね。

    牛や豚の体温は人より高いため、体内で脂が酸化して細胞を傷つけないよう、安定した飽和脂肪酸をエネルギーとして蓄えているとも考えられています。
    ココナッツやパームのように高温環境で育つ植物の油も、酸化に強い性質を持っています。

    不飽和脂肪酸とは

    一方、不飽和脂肪酸は、炭素鎖の途中に二重結合があり、分子構造が折れ曲がっています。
    このため、常温で液体になりやすく、細胞膜の柔軟性を保つのに役立ちます。

    代表例は、

    • オリーブオイル
    • ごま油
    • 亜麻仁油
    • えごま油

    ただし、不飽和脂肪酸には大きな弱点があります。それが酸化しやすさです。
    光・熱・空気に触れることで酸化が進み、過酸化脂質に変化すると、体内で活性酸素を大量に発生させ、細胞を傷つけてしまいます。いい油も、使い方を間違えると“毒”になってしまう場合があります。

    「体にいい油」を活かすために大切な視点

    世の中には、「オメガ3がいい」「トランス脂肪酸は悪い」など、さまざまな情報があふれています。
    しかし、多くの人が混乱するのは、「結局、何をどう使えばいいのか」が分からないからです。

    重要なのは、

    • 油の種類
    • 加熱するのか、しないのか
    • どんな目的で使うのか

    という視点を持つことです。

    腸にとってやさしい油選びは、特別なことではありません。
    毎日の小さな選択の積み重ねが、腸内環境、ひいては全身の健康を支えていきます。

    次回(中編)では、実際の商品を例にしながら、不飽和脂肪酸の商品についてさらに掘り下げていく予定です。

    📝 用語解説

    脂質
    三大栄養素のひとつ。エネルギー源だけでなく、細胞膜やホルモンの材料となる重要な栄養素。

    細胞膜
    細胞を包む膜。脂質を主成分とし、物質や情報の出入りをコントロールしている。

    慢性炎症
    自覚症状が乏しいまま、体内で長期間続く炎症状態。さまざまな生活習慣病と関連する。

    リーキーガット
    腸のバリア機能が低下し、本来通過しない物質が血中に漏れ出す状態。

    飽和脂肪酸
    炭素鎖が水素で満たされた安定した脂肪酸。熱に強く酸化しにくい。

    不飽和脂肪酸
    炭素鎖に二重結合を持つ脂肪酸。細胞膜の柔軟性に寄与するが、酸化しやすい。

    過酸化脂質
    酸化した油が体内で生成する物質。活性酸素を発生させ、細胞を傷つける。

    活性酸素
    体内で発生する反応性の高い酸素。過剰になると老化や病気の原因となる。

    オメガ3脂肪酸
    不飽和脂肪酸の一種。体内で合成できず、食事からの摂取が必要。

    腸活
    腸内環境を整えるための生活習慣や食事の工夫を指す言葉。

    その油、腸に負担かけていませんか?正しい油の選び方 体調不良の原因が「油」だった?医師が真実を語る【前編】