腸内細菌の回復力(レジリエンス)を高めよ!

    腸内細菌の回復力(レジリエンス)を高めよ!

    今回は腸内細菌のレジリエンスについて解説したいと思います。

    レジリエンスって聞き慣れない言葉ですが、日本語で訳すと「回復力」という意味になります。

    つまり、腸内細菌のレジリエンスとは、「乱れた腸内細菌叢が回復する力」という意味です。

    腸内には1,000種類、100兆個もの細菌が住み、食べ物の消化吸収や体内の免疫などを支えています。この腸内細菌叢は、普段の生活の中で乱れることがよくあります。

    それでも多くの場合、時間の経過とともに元の状態に近いところまで戻ってくる力を持っています。これが腸内細菌のレジリエンスです。

    どんな時にレジリエンスが発揮されるかですが、主に3つの場面でレジリエンスが発揮されます。

    1 抗生物質投与

    普段の生活週間の中で、薬剤が一番腸内細菌叢を乱すと言われていますが、中でも抗生物質は腸内細菌叢を乱す薬の代表です。菌を殺す薬なので当然ですよね。

    抗生物質投与により、腸内細菌は大きく破壊されます。ですが、多くのケースは数週間で元通りに回復してきます。

    2 乱れた食事

    食事も腸内細菌叢を乱しやすいです。胃腸に直接入っていくものですから当然と言えば当然ですよね。

    具体的には脂っこい高脂肪食や、糖質まみれの高糖質食ばかり食べていると、腸内細菌叢は乱れてきます。しかしながら、バランスの良い食事に戻すと数日から数週間で元に戻ってきます。

    3 胃腸炎や食中毒などの感染症

    これもそうですよね。外からウイルスや細菌などの体にとっての異物が侵入し、腸の中を荒らすことによって腸内細菌叢は大きく乱れます。これにより、腹痛や下痢などの症状が出るんですよね。これも一時的なもので、私たちの免疫力でこの異物を排除すれば、数日で元に戻ってきます。

    これらって普段の私たちの生活で必ず起こりうることですよね。

    それではレジリエンスが高い人、低い人っているのでしょうか?

    もちろんこれはいます!レジリエンスについては個人差があり、すぐに元の健康な腸内環境に戻る人と、いつまで経っても元の腸内環境に戻らず、ついには完全に元に戻らないような人もいるんです。

    怖いですよね。それではなぜレジリエンスに個人差があるのでしょうか?

    それは普段の生活習慣で差が出てくると言われています。

    それでは具体的に、どうすれば腸内細菌のレジリエンスが高くなるかを3つ説明しましょう。

    1 食物繊維をしっかりと摂る

    普段から食物繊維をしっかりと摂っていると、腸内細菌の多様性が高まり、レジリエンスが高くなるという報告があります。

    Shaillay Kumar Dogra, et al, “Gut Microbiota Resilience: Definition, Link to Health and Strategies for Intervention” Front Microbiol.2020 Sep15:11:572921

    できれば1日25g程度の食物繊維を摂りたいところですね。

    そして可能であれば朝に沢山食物繊維を摂りましょう!

    2 普段からプロバイオティクスを行う

    普段からしっかりと発酵食品や整腸剤などのサプリメントで乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌を毎日摂っていると、レジリエンスが高くなります。

    Shaillay Kumar Dogra, et al, “Gut Microbiota Resilience: Definition, Link to Health and Strategies for Intervention” Front Microbiol.2020 Sep15:11:572921

    発酵食品を毎日食べるのが大変であれば、ぜひ整腸剤を毎日飲むようにしましょう。

    できれば整腸剤の菌の数が多い方がおすすめです。理想は1日1兆個ですね。

    3 適度な運動を行う

    適度な有酸素運動が善玉菌を増やし、腸内細菌の多様性を高めることにより、レジリエンスを高めるという報告があります。

    Leizi Min, et al, “Effects of Exercise on Gut Microbiota of Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis” Nutrients.2024 Apr 5;16(7):1070.

    運動もやりすぎると逆効果です。どれくらいの強度で運動すると良いのかというと、中強度の運動です。

    具体的には、早歩きの散歩、軽いジョギング、サイクリングといった運動ですね。

    これを1日30分程度、週3回で効果が出てきますので頑張って続けてみましょう。

    そして最近のトピックスとして、このレジリエンスを利用した論文報告もあります。

    それは、一度腸内細菌叢を崩して、そして選択的に良い菌を増やそう!という試みです。

    Kensuke Sato, et al, “Fasting builds a favorable environment for effective gut microbiota modulation by microbiota-accessible carbohydrates” BMC Microbiol. 2025 Jul 5;25(1):414. doi: 10.1186/s12866-025-04140-y.

    これは、日本の北里大学と慶應義塾大学の研究グループによるマウスによる研究報告です。

    具体的な方法ですが

    36時間の絶食時間中(水のみ可)に、12時間おきに、合計3回、食物繊維やオリゴ糖といった腸内細菌のエサになる食事のみを食べさせました。

    これにより、わずか1日で腸内細菌叢の構成が大きく変わり、食べさせる食物繊維やオリゴ糖の種類を変えることにより、異なる腸内細菌が増殖したとのことです。

    さらに腸管の粘膜免疫の門番の役割を果たしているIgA抗体の産生が約18倍も増加したとのことでした。

    面白いですね。これがヒトにも当てはまるのであれば、定期的に1日~1日半程度の絶食(ファスティング)を行って、絶食中に食物繊維やオリゴ糖などを摂ると善玉菌が1日で増殖し、免疫力も上がるということになりますね。

    そしてここでまた1つ患者さんからよく聞かれる質問があります。

    それは

    「大腸カメラ検査をした後って腸が空っぽですが、腸内細菌もゼロになってるんですか?」

    です。

    これも今まで何回も質問されてきました。

    我々が毎日行っている大腸内視鏡検査ですが、これって下剤と約2Lもの洗腸剤を飲んで腸の中を空っぽにします。

    きちんと空っぽになった腸は、とても綺麗で残便もほぼ残ってません。逆を言えば綺麗になっているので大腸の中を観察できるんですよね。

    でもこれって腸内細菌も無くなってるんでしょうか?

    正解は、ゼロにはなりません。

    これは、大腸内視鏡検査の前処置によって腸内細菌はある程度洗い流されますが、大体は腸の粘膜に付着して残っています。つまり、これがレジリエンスによって元に戻るんですね。

    実際の論文では、大腸内視鏡検査の前処置後、約14日(2週間)で元の腸内細菌叢に戻ると報告されています。

    Naoyoshi Nagata,et al,” Effects of bowel preparation on the human gut microbiome and metabolome”Sci Rep.2019 Mar11;9(1):4042.

    そして、大腸内視鏡検査の1ヶ月前から複数の種類が入った整腸剤のようなサプリメントを飲ませると、大腸検査後の腸内細菌叢の乱れが小さく抑えられ、レジリエンスにより1週間ほどで元に戻ったとのことでした。大腸内視鏡検査後に起こる腹部膨満や腹痛などの合併症まで抑えることができたという報告があります。

    Dooheon Son, et al, “Benefits of Probiotic Pretreatment on the Gut Microbiota and Minor Complications after Bowel Preparation for Colonoscopy: A Randomized Double-Blind, Placebo-Controlled Pilot Trial” Nutrients.2023 Feb24;15(5):1141.

    さらには、大腸内視鏡検査直後からサプリメントなどのプロバイオティクスを行うと、腸内細菌叢のレジリエンスを早めるといった可能性も示唆している報告もあるんです。

    Hyeong Ho Jo, et al, “Alteration in gut microbiota after colonoscopy: proposed mechanisms and the role of probiotic interventions” Clin Endosc. 2025 Jan;58(1):25-39.

    まとめると、

    普段から整腸剤などのサプリメントを飲んで腸活している人は、大腸内視鏡検査の前処置で腸内細菌叢がある程度洗い流されてもすぐに元に回復するということだと思います。

    いかがだったでしょうか?いかに普段から食物繊維や整腸剤などを摂取して腸活しておくことが、腸内細菌のレジリエンスを高める要因になるということですね。

    これからも毎日腸活していきましょう!