GERDを知ろう!

    GERDとは? 

    Gastro Esophageal Reflux Diseaseを略してGERD、日本語ではガードと呼びます。これは、胃食道逆流症のことで、胃の内容物が食べ物の流れに逆行すること、つまり胃から食道へ逆流する病気です。

    GERDという言葉には広い意味で、逆流性食道炎と非びらん性胃食道逆流症が含まれます。

    非びらん性胃食道逆流症とは、Non-Erosive Reflux Diseaseの頭文字をとって、「NERD」(ナード)ということもあります。

    逆流性食道炎もNERDも、胸やけ症状が胃酸の逆流と関係があります。実は胸やけの症状だけでは両者を区別することはできません。

    GERDは、かつては欧米の疾患と見なされていましたが、現代の日本では食生活の欧米化やピロリ菌に感染していない若い世代、ピロリ菌除菌後の中高年世代が増えることによる胃酸過多の状態が胃酸の逆流を引き起こし、すでに「国民病」の一つとなっていると言っても過言ではありません。

    ✓ GERDは生活習慣病の一つです。

    基本的には良性疾患で命にかかわるような病気ではないのですが、胸やけなどの不快な症状が続いて、生活の質(QOL)が大きく低下してしまうことが問題となっています。激しい痛みを伴う狭心症、心筋梗塞に匹敵するようなQOLの低下といわれているのです。近年、国内で患者数が急激に増加しており、成人の10~20%が該当すると考えられています。

    GERDと逆流性食道炎は同じ?

    胃食道逆流症よりも有名な病名が逆流性食道炎ではないでしょうか。一般的には胃酸の逆流というと逆流性食道炎と考える方がほとんどだと思います。先ほど述べたように、逆流性食道炎とは胃食道逆流症のタイプの一つに分類される病気のことです。

    胃食道逆流症で、かつ、食道の粘膜に胃酸のダメージによる炎症やびらん(粘膜や皮膚の表層が欠落した状態)などを内視鏡検査で確認した場合に初めて、「逆流性食道炎」と診断します。さらに専門的にはなりますが、逆流性食道炎の中には、内視鏡検査で炎症やびらんがみられるのに胃食道逆流症の症状(胸やけなど)がないこともあり、これを「無症候性逆流性食道炎」と呼んでいます。

    • 逆流性食道炎(Reflux Esophagitis)=びらん性GERD→内視鏡で赤い!
    • 非びらん性胃食道逆流症(Non-Erosive Reflux Disease:NERD)→内視鏡で赤くない!

    つまり、胃食道逆流症(GERD)の中で食道粘膜のダメージが確認できるものが「逆流性食道炎(RE)」、確認できないものが「非びらん性胃食道逆流症(NERD)」となります。

    GERDはなぜ起こる?

    GERDが起こる原因の根本は、食道と胃の接合部におけるバランスの喪失にあります。通常、食道胃接合部には、下部食道括約筋(Lower Esophageal Sphincter:LES)と呼吸に関係している横隔膜という二つの主要な構造があります。この二つの筋肉が効果的な逆流防止バリアを形成しているのです。LESは食道の下端にある輪状の筋肉で、一方向弁のように機能します。食物が胃に入る際に開き、食物が胃に入ると胃酸が逆流するのを防ぐために閉じます。そして、横隔膜ですが、実は胸部と腹部を隔てる大きな筋肉であり、LESを囲んで圧力を加え、この食道胃接合部を固く閉じるのを手助けするのです。

    食道と胃のつなぎ目の圧力が、胃の内圧よりも低くなると、胃の内容物が食道に逆流していきます。この圧力のバランスが崩れると、胃食道逆流症が悪化する要因となるのです。

    その原因としては、「胃酸分泌の増加」と「逆流の増加」です。

    ①胃酸分泌増加の要因として

    ヘリコバクターピロリ菌感染率の低下・・・胃粘膜が元気なので胃酸がよく出る状態です。

    食の欧米化・・・高脂肪、高カロリー食が原因となります。

    アルコール・・・胃酸を増やすだけでなく、食道の蠕動運動を低下させて食道に内容物が長くとどまります。

    食べ過ぎ・・・胃の内容物が多くなることで胃が膨張し、食道と胃のつなぎ目がゆるくなることで食道まで食べものが満たされていまいます。

    刺激物・・・辛いもの、塩っ辛いもの、酸っぱいもの、甘いものの摂りすぎは胃酸を増やします。

    ②逆流増加の要因として

    肥満・・・食道と胃のつなぎ目に内臓脂肪がつくことで角度(ヒス角)が緩くなります。

    食道裂孔ヘルニア・・・食道と胃のつなぎ目の筋肉が弱くなって隙間が大きくなり、胃の上部の一部だけが食道の方にずれ出てきた状態です。

    亀背・・・高齢者の骨粗鬆症に伴うことが多いです。前屈みの姿勢を取ってしまうことにより、腹圧が上昇してしまうからだといわれています。

    妊娠・・・胎児による腹圧の上昇と、ホルモンの変化(プロゲステロン、リラキシン)がLESを含む筋肉を弛緩させるため、妊娠中の逆流は非常に一般的です。

    喫煙・・・タバコに含まれるニコチンはLESを弛緩させます。また、喫煙は慢性的な咳を引き起こし、腹圧を上昇させ、胃の内容物排出を遅らせる可能性があります。

    薬剤・・・カルシウム拮抗薬(高血圧治療薬)、ベンゾジアゼピン系薬剤(精神安定剤)、一部の喘息治療薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などは、LESを弛緩させたり、食道粘膜を刺激したりする可能性があります。

    GERDの症状は?

    胸やけ、呑酸(どんさん)が代表的な症状です。

    ✓ 胸やけ

    最も特徴的な症状です。胸やけといっても胸が焼けている訳ではありません。胸骨のすぐ後ろに食道が通過しますが、胸の中央部に焼けるような不快な感覚として表現されます。英語でHeart Burnと表現されるために日本語訳では胸やけになったと思われます。胸やけはみぞおちから始まり、喉の方へはい上がってくることもあります。通常、食後、特に大量の食事や脂肪分の多い食事の後に感じることが多く、夜間や横になったときに悪化する傾向があります。これは、その姿勢が酸の逆流を容易にするためです。

    ✓ 呑酸

    胃酸や未消化の食物が胃から喉や口まで逆流してくる現象です。しばしば酸っぱいものが逆流すると表現されます。胃酸の酸っぱい味や苦い味として感じることがあります。この現象は、特に前かがみの姿勢やお辞儀、急に横になったりしたときに良く感じることが多いでしょう。

    ただ、面白いことに症状の表現が人によってかなり違うのが特徴です。

    以下はすべて胃酸の逆流症状なのです。

    • 胸がやける
    • 胸前の痛み
    • のどが熱い感じがする
    • のどに引っかかる感じ
    • 酸っぱいものを口の中に感じる
    • みぞおちの上がジリジリする
    • 胸のあたりがヒリヒリする
    • のどがしみる感じ
    • 食べたものが胸の途中で停滞している感じ
    • 食べ物がつかえる感じ

    これだけありますが、上記のすべてが胃酸の逆流に関係する症状と考えられます。

    最近、消化器系以外の疾患にもこの「胃酸の逆流」が症状の原因だったと考えられることが注目されています。呼吸器系の疾患として原因不明の長引く咳として認識される慢性咳嗽(がいそう)、コントロールが悪化した気管支喘息がありますが、咳止めを処方してもよくならない、喘息の薬を吸入してもよくならない場合、実は微量の胃酸の飛沫が気道に吸い込まれ、刺激を引き起こしている可能性があり、胃酸の逆流を抑える薬剤の投与で改善したケースも経験します。このように消化器系以外の病気と胸やけとの関連が疑わることもあるのです。

    胸やけで疑われる病気は?

    胸やけが出る病気は、GERDだけではありません!!

    胸やけを感じるとGERDと思ってしまう方が多いようですが、胸やけがみられる病気は他にもたくさんあります。例えば、実は食道に癌があって食道が狭くなっていて、そのために胃酸が逆流している可能性も少なからずともあるため、容易な自己判断は禁物です。

    • 胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease:GERD)

    逆流性食道炎RE(Reflux Esophagitis)=びらん性GERD
    非びらん性GERD(non-erosive reflux disease:NERD)

    逆流性食道炎の診断は内視鏡診断なので、内視鏡を受けて胃食道接合部が赤く腫れていなくてはなりません。GERDの中の一部が逆流性食道炎で、実は40%ぐらいの方しかいないと言われています。残りの60%は非びらん性ですが、逆流性食道炎も、非びらん性GERDも症状が胃酸の逆流と関係があります。

    • 逆流性知覚過敏

    胃食道逆流が正常範囲内であっても症状が胃食道逆流と相関する場合には、逆流性知覚過敏といいます。圧や化学刺激に対する知覚過敏および中枢性過敏の関与が指摘されていて現代社会に多い、不眠、ストレス、不安などの心理的因子がこの食道知覚を変容させて症状発現に関与しています。咽喉頭異常感症とも呼ばれ、咽頭にはヒステリー球と呼ばれる部位があり、実際に異物がないにもかかわらず、喉に何かがつかえているような、詰まったような感覚が出現する事があります。

    • 機能性胸やけ

    胃酸逆流の関与しない機能性胸やけ(functional heartburn:FH)で、FHの病態は依然不明な点が多いとされています。上記のストレスに加えて、酸逆流以外の刺激、たとえば食道の伸展、食道平滑筋の縦方向の収縮などの機械的な刺激が考えられます。

    • 食道がん

    食道がんが進行してくると食道内を塞ぐようになり、食事の通過障害が出現してきます。通過に時間がかかるようになって、狭窄の程度がひどくなってくると逆流症状を生じてくることがあります。

    • バレット食道がん(食道胃接合部がん)

    食道と胃のつなぎ目部分を食道胃接合部といいます。逆流性食道炎による炎症により傷害を受けた食道粘膜が胃粘膜となって治りますが、それをバレット食道といいます。食事の高脂肪化により、欧米諸国に多くみられるバレット食道が原因のバレット食道がんが近年増加傾向です。特に若い世代のバレット食道がんが増加してきており、注意が必要です。

    • 胃がん

    胃がんが胃の出口である幽門にあって出口を塞いだり、スキルス胃癌によって胃全体が硬くなってしまうことでぜん動運動がなくなると、胃内にたまった食事や胃液が消化されず、食道に逆流することで逆流症状を認めるようになります。

    逆流性食道炎を診断するための検査とは?

    • 胃内視鏡検査(胃カメラ)

     「胸やけ」は逆流性食道炎(胃食道逆流症)の典型的な症状ではありますが、食道がんや胃がん(噴門部がん)でも認めることがあります。逆流性食道炎の診断には、まずは内視鏡検査を行うことが重要です。なぜならば逆流性食道炎の重症度の評価や、食道裂孔ヘルニアの有無を確認するだけではなく、「がん」を含めた他の疾患が原因かどうかの確認にも内視鏡検査は重要なのです。

    • 24時間食道インピーダンス・pHモニタリング

     胃食道逆流の程度を評価するための検査で、酸性(pHの低い)の胃液が食道内に逆流すると食道内pH値が低下することを利用しています。pHモニターの装置(直径2ミリほどの柔らかいチューブ)を鼻から入れて先端部を胃に留置し24時間のpHの変動を記録して、胃食道逆流の有無、程度を評価します。この検査は胃液だけでなく、胃液以外の逆流因子である腸液(アルカリ性)や食道の運動機能、気体の逆流も把握できるため胃酸分泌抑制剤で症状が改善しない場合、その原因を解明するのに優れた検査です。大学病院の中でもGERDを専門とする病院での検査が必要になります。

    逆流性食道炎の重症度は?

    逆流性食道炎の内視鏡分類は、改定ロサンゼルス分類を使用しています。これは内視鏡で「発赤の長さ・程度」を分類したものになります。主なGradeはA、B、C、Dであり、軽症がA、B、重症がC、Dになります。例えばロサンゼルス分類Aであれば、LA-Aと記載します。ただしグレードN(正常)、M(最小限の変化)は粘膜の発赤を伴っていない状態です。グレードN(正常)→M(最小限の変化)→A(軽症)→B(軽症)→C(重症)→D(重症)と進行していきます。

    グレードAとBは軽症型で、粘膜のひだを越えない範囲でびらんが確認されます。グレードCとDは重症型で、粘膜のひだを越えて広範囲にびらんや潰瘍が広がっている状態です。重症度に応じて治療方針が決定されます。

    逆流性食道炎の治療とは?

    逆流性食道炎(胃食道逆流症)は生活の質を下げてしまう病気です。症状が当てはまる方は、お近くの消化器内科を受診されることを推奨致します。

    当院では消化器内科クリニックとして、逆流性食道炎(胃食道逆流症)を専門的に治療しています。逆流性食道炎の疑いがある方はいつでもご来院ください。

    また、他院で胃酸を抑える薬を内服しても症状が良くならない場合もあるかと思います。症状の原因は胃酸の逆流ではないことも考えられます。胃酸を抑える薬以外の方法で対応可能な場合もありますので、ご相談ください。

    逆流性食道炎(胃食道逆流症)の代表的な薬物治療方法は下記の通りです。

    胃酸分泌抑制剤(プロトンポンプ阻害剤、P-CAB製剤)・・・胃酸の分泌を抑える薬

    胃蠕動運動改善薬・・・胃や食道の動きを改善する薬

    粘膜保護剤・・・粘膜表面をカバーすることで胃酸の刺激から粘膜を守る薬

    胃酸中和剤・・・すでに出過ぎた胃酸を直接的に中和する薬

    最後に

    やはり基本的には食事療法が重要になります。暴飲暴食、ストレスには気を付けましょう。日常の食事療法、生活習慣を改善するだけでも驚くほど症状が改善する場合があります。ぜひ意識して実践してみてください。

    ✓ 食生活で気をつけること

    高脂肪食、アルコール、チョコレート、コーヒー、炭酸飲料、柑橘類などは胃酸の分泌が多くなり、食道と胃のつなぎ目がゆるみやすくなるため、食道へ胃酸が逆流しやすくなります。また、食べ過ぎや就寝前の食事も胸焼けを起こしやすくするといわれています。就寝前2時間は食事しないようにしましょう。以上の様な食生活に心当たりがあれば、気をつけてみましょう。

    ✓ 日常生活で気をつけること

    胃酸が逆流しにくいような習慣、体づくりをすることが大切です。体重が多く肥満傾向にある人ほど、腹腔内で胃が圧迫され胃酸が逆流し、逆流性食道炎を発症しやすくなります。また、お年寄りの方に多い、前かがみの姿勢も逆流しやすくなります。

    寝る姿勢も重要です。食べたときに食物がたまる胃の弓隆部と食道胃接合部の位置関係から、右側を下にして横になると胃酸が逆流しやすいので、左側を下にして寝ることをお勧めします。また、頭側を高くして寝ることも有効です。

    これらの生活習慣の改善で症状が改善するかどうかは個人差がありますが、特に改善効果が高いことがわかっているのは適切なダイエットによる体重コントロールです。

    食事療法で症状が改善しない場合は胃カメラ検査を早めに受けることをお勧めします。胃カメラ検査を受けて直接観察することで症状の原因究明、消化器疾患の診断や治療ができます。何もせずに放っておいても症状は決してよくなりません。

    食生活や生活習慣の改善でもよくならない場合は薬の内服を併用することで改善する可能性がありますので専門医へご相談ください。