健康のため、ダイエットのために「野菜から先に食べる=ベジファースト」を実践してきた方は多いでしょう。しかし近年、この常識が大きく見直されています。
本記事では、内視鏡専門医の視点から「なぜベジファーストが見直されたのか」「本当に太る原因は何なのか」を、医学的メカニズムを交えてわかりやすく解説します。
ベジファーストが“消えた”本当の理由
ベジファーストとは、食事の最初に野菜を食べることで血糖値の急上昇を抑え、肥満や糖尿病を予防しようとする食事法です。
実際、2020年版の日本人の食事摂取基準には「野菜を先に食べることでHbA1cが低下し、体重減少につながる」という記載がありました。
しかし、2025年版の食事摂取基準ではこの記載が削除されています。
その理由は、根拠とされた論文に“明確な結論が示されていなかった”ことが後に指摘されたためです。

血糖値対策の本質は「順番」ではなく「組み合わせ」
食後高血糖は確かに健康リスクです。
一般的に、食後血糖値が200mg/dL以上になると「食後高血糖」とされ、140〜200mg/dLは糖尿病予備軍と考えられます。
では、血糖値の急上昇を防ぐために本当に重要なのは何でしょうか。
答えは「何を、どう組み合わせて食べるか」です。
私たちの体重増加や脂肪蓄積は、単純なカロリー計算では説明できません。
カギを握るのは、インスリンを中心としたホルモンの働きです。

太る・太らないを決める三大栄養素の真実
① たんぱく質|実は「太らない」栄養素
たんぱく質は、筋肉や臓器を作る材料となり、体内で脂肪に変換されにくい栄養素です。
また糖質を含まないため、血糖値を上げにくい特徴があります。
② 脂質(脂肪)|単独なら太らない?
脂質は1gあたり9kcalと高カロリーなため、「太る原因」と思われがちです。
しかし、脂質単独では血糖値はほとんど上がりません。
血糖値が上がらないと、インスリンではなくグルカゴンというホルモンが分泌され、脂肪分解酵素(リパーゼ)が活性化します。結果として、脂肪は分解され、痩せる方向に働くのです。
③ 糖質|太るメカニズムの主犯
糖質を摂取すると血糖値が急上昇し、インスリンが分泌されます。
インスリンは脂肪細胞の膜にあるGLUT4を活性化させ、血中の糖を脂肪細胞内に取り込み、脂肪として蓄積させます。
つまり、糖質は体脂肪を増やす最大の要因です。
「糖+脂」が最も危険な組み合わせ
脂質単独では太りにくいにもかかわらず、「脂っこい食事は太る」という印象が強い理由。
それは糖質と脂質を同時に摂っているからです。糖質によるインスリン分泌でGLUT4が働き、
さらにリポタンパク質リパーゼが血中脂肪を脂肪細胞へ取り込みます。
この二重作用により、脂肪が一気に蓄積されてしまうのです。

脂は本当に悪者?飽和脂肪酸の誤解
かつては「飽和脂肪酸は動脈硬化の原因」とされ、摂取制限が推奨されてきました。
しかし、その根拠となった理論は1950年代の古い観察研究に基づくものです。
近年の研究では、日本人において飽和脂肪酸摂取量が多い人ほど動脈硬化が少ないという報告もあります。
現在では「脂質は安全な栄養素であり、過度に恐れる必要はない」という見解が主流です。
まとめ|我慢より“理解”が健康への近道
ベジファーストを、無理に守り続ける必要はありません。
「最初に野菜を食べなければいけない」「順番を間違えたら意味がない」
そんなふうに食事が“ルール”になってしまうと、かえって負担になってしまいます。本当に大切なのは、
食事そのものを楽しむこと、そして、どんな栄養素を、どのような組み合わせで摂っているのかを理解することです。
正しい知識を知っていれば、
必要以上に制限したり、食べることに不安を感じたりする必要はありません。
理解を深めることが、結果として無理のない、健康的な食生活へとつながっていきます。
ベジファースト
野菜を最初に食べることで血糖値上昇を抑える食事法。
血糖値
血液中のブドウ糖濃度。食後に上昇しやすい。
食後高血糖
食後に血糖値が200mg/dL以上になる状態。
HbA1c
過去1〜2か月の平均血糖状態を示す指標。
インスリン
血糖値を下げ、糖を脂肪として蓄えるホルモン。
グルカゴン
血糖値を上げ、脂肪分解を促すホルモン。
GLUT4
インスリン依存性の糖輸送体。脂肪蓄積に関与。
リパーゼ
脂肪を分解する酵素。
リポタンパク質リパーゼ
血中脂肪を脂肪細胞へ取り込む酵素。
飽和脂肪酸
主に動物性脂肪に多く含まれる脂肪酸。