私たちが今回お伝えしたいのは、「なんとなく体に良さそう」という話ではありません。
科学的根拠(エビデンス)に基づき、実際にリスク低下が示されている方法を、今回前編は5つの習慣のうちの2つを医師の視点からわかりやすく解説していきます。
がん・感染症リスクは「生活習慣」でここまで変えられる
厚労省が2026年1月に公表した「2022年 全国がん登録 罹患数・率報告」によると、日本で2022年に新たにがんと診断された人は 99万930人、そして 年齢調整罹患率(人口10万人あたり)は 375人 です。
※「罹患率」は指標がいくつかありますが、上の 375人/10万人 は、高齢化の影響を取り除いて年ごとの比較に使いやすい 年齢調整罹患率 です。

ある研究では、特定の生活習慣を3つ組み合わせるだけで、がんの罹患率が61%低下したというデータも報告されています。
今回ご紹介するのは、その研究で示された3つに、私たち医師が「これは必須」と考えた2つを加えた、合計5つの習慣です。
どれも今日から意識できる内容ばかりですので、ぜひご自身の生活と照らし合わせながら読んでみてください。
習慣① ビタミンD ― 実は「ホルモン」として働く最重要栄養素
ビタミンDは、私たちががん予防において最も重要視している栄養素です。
多くの方は「ビタミンの一種」と思われがちですが、実はビタミンDはステロイドホルモンのような働きをします。
脂溶性であるビタミンDは、細胞膜を通過し、DNAに直接作用して多数の酵素の産生を調整します。
さらに、ビタミンD受容体は全身ほぼすべての細胞に存在しており、不足すると以下のような影響が報告されています。
- がんリスク上昇
- 心肺機能低下
- 抑うつ症状
- 不妊
- 骨粗鬆症
東京慈恵会医科大学の研究では、日本人の約98%がビタミンD不足と報告されています。
血中濃度が低い人は、がんの死亡率が約1.7倍高いというデータもあります。
なぜ食事や日光だけでは足りないのか
目標とするビタミンD摂取量は1日4,000IU。
しかし、卵1個で約76IU、鮭1切れ(100g)で約640IUと、食事だけで補うのは現実的ではありません。
そのため、不活性型(貯蔵型)のビタミンD3サプリメントを活用することが、最も確実な方法といえます。
※骨粗鬆症治療で処方される「活性型ビタミンD」は、がん予防のエビデンスとは異なる点に注意が必要です。

習慣②オメガ3脂肪酸 ― 全身の炎症を抑えるカギ
オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)は、強力な抗炎症作用を持つ必須脂肪酸です。
私たちの食生活では、揚げ物や加工食品に多いオメガ6脂肪酸を過剰に摂取しがちで、これが慢性炎症やがんリスクを高めます。
がん予防を意識する場合、オメガ3は1日1〜2gを目標にしましょう。
効率よく摂るには?
- サバ(生)約60g
- イワシ(生)約70g
- サンマ(生)約70g
これらを週3〜4回取り入れることで、十分な量を確保できます。
刺身や缶詰など、油ごと摂取できる調理法がおすすめです。
医師が実践する残りの重要習慣とは
今回の動画では、このほかにも
- インスリン負荷を減らす食習慣
- 腸内環境を整える意識
- 適度な運動習慣
といった、がん・感染症予防に直結する習慣が紹介されています。
できることを一つずつ積み重ねることが、将来の健康を大きく左右します。
まとめ|科学的に正しい知識が、あなたの未来を守る
がんや感染症は、残念ながら「これさえやれば絶対に防げる」というものではありません。
しかし一方で、正しい知識と日々の生活習慣によって、そのリスクを大きく下げられることは、数多くの医学研究によって明らかになっています。
平島、秋山先生も年始の過ごし方の話題の中で、
「走りました」「自転車に乗りました」「トライアスロンを意識してます」
といった先生方の会話がありました。
特別なことをしているわけではなく、できる範囲で体を動かし、健康を意識した時間を積み重ねている様子が印象的です。
医師という立場で多くの患者さんを診ているからこそ、
「病気になってから治す」のではなく、
「病気になりにくい体をつくること」の大切さを、先生方ご自身が日常の中で実践されています。
今回ご紹介した2つの習慣も、決して難しいものではありません。
すべて最新の医学研究に裏付けられた、“今日から意識できる現実的な選択肢”です。
「何から始めればいいかわからない」という方は、
まずはビタミンDを意識すること、そしてオメガ3脂肪酸をしっかり摂ることから始めてみてください。
小さな一歩でも、積み重ねることで、数年後・十数年後の体は確実に変わってきます。
健康は、特別な人だけのものではありません。
日々の選択の積み重ねが、あなたの未来を守ります。
この機会に、ご自身の生活習慣を少しだけ見直してみてはいかがでしょうか。
📝 用語解説
ビタミンD
脂溶性ビタミンで、ホルモン様作用を持つ。免疫調整やがん抑制に関与。
25OHビタミンD
血中ビタミンD濃度を評価する指標。栄養状態の把握に用いられる。
活性型ビタミンD
腎臓で活性化された形。骨代謝目的で処方されるが、がん予防とは別。
オメガ3脂肪酸
EPA・DHAなど。抗炎症作用を持つ必須脂肪酸。
オメガ6脂肪酸
サラダ油などに多く含まれ、過剰摂取で炎症を促進する。
慢性炎症
長期間続く体内炎症。がんや生活習慣病の土台となる。
必須脂肪酸
体内で合成できず、食事から摂取が必要な脂肪酸。
DNA調節作用
遺伝子の働きを調整し、酵素やタンパク質産生に影響する作用。
インスリン負荷
血糖上昇に伴うインスリン分泌の負担。過剰だと代謝異常を招く。
腸内環境
腸内細菌のバランス。免疫や炎症制御に深く関与する。